Staff interview
#33
01. 担当者プロフィール
担当者プロフィール
- お名前:白石 雅久 / Gaku Shiraishi
- 組織名:まなび小中高プロダクトマネジメントユニット
- 入社時期:2021年 09月
スタディサプリの高校向けサービスでは、これまで提供してきた到達度テストのDXを実施。紙の問題用紙を読んで、同じく紙の解答用紙に手書きで記入するPBT方式(Paper Based Testing)から、デジタルデバイス上で出題・解答するCBT方式(Computer Based Testing)へとリニューアルを進めています。テストのDXはどのような狙いで行われているのでしょうか。CBTプロジェクトをリードする白石雅久さんにこれまでの道のりを聞きました。
02. 自由な発想でプロダクトをつくり、生徒や先生が心から喜んでくれるものを届けたい
Q:白石さんの経歴を教えてください。
白石:もともとは教師をしていました。私立中学校の非常勤教員として理科を教えていたのですが、3年目にこのまま残るよりも一度社会に出てみたいと考えるように。周りの先生方に背中を押されたのも踏み出した理由です。「あなたはまだ若いから、今は学校という枠にとらわれず広く社会を勉強して、その知見を教育の世界に持ち帰れば良い」とアドバイスをいただきました。なので、転職先には様々な企業・業種と接点を持つことができ、若くても企業の経営者と話すチャンスが多いコンサルティング会社を選びました。
転職先では、データ&アナリティクスという部門で、主にクライアント企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進プロジェクトを担当し ました。金融・不動産・メーカー・百貨店など、幅広いクライアントを手掛ける中で私が感じたのは、まだまだ世の中にはちょっとしたDXで劇的に改善・進化する余地が沢山あること。例えば日本を代表するような大手企業でも、いまだにアナログなやり方が残っているところは少なくありませんでした。もちろん、全てのプロセスをオートメーション化するのはまだ技術的に難しい部分もありますが、全体の10%でも20%で良いから出来る範囲でDXを実現するだけで、生産性や品質の改善には十分インパクトがあります。DXによって人々の仕事や暮らしが大きく変わる可能性を感じました。
Q:なぜリクルートへ転職してきたのでしょうか。
白石:いつかは教育業界に戻るつもりでした。その一方で、コンサルタントとしての仕事を通して世の中の様々な商売の仕組みに触れるうちに、ビジネスの面白さにも惹かれていきました。「良いものをつくって、届けて、ユーザーが喜んでくれたら、自分たちも利を得ることが出来る」というこの流れが面白く、次は事業の主体者として仕事がしたいと思うように。それなら教育業界向けのプロダクトに携わりたいし、できれば個人の裁量が大きく、自由にチャレンジしやすい環境が良い。そう検討するなかでたどり着いたのが、リクルートのスタディサプリでした。
Q:スタディサプリでのミッションを教えてください。
白石:私は現在、スタディサプリの中でも高校で導入いただくプロダクト(BtoB領域)のプロダクトマネジメントを担っています。具体的な業務としては、スタディサプリの機能やコンテンツを改善・追加・リニューアルするための企画および、リリースまでの計画を立て、関係各所と調整しながら実現させていくこと。現在、高校向けのスタディサプリは全国の高校のうち約3分の1で活用いただいており、生徒や先生に対する大きな責任を感じながら各種プロジェクトを進めています。
03. 試験翌日には結果が分かるスピード感を実現すれば、生徒の学び方が大きく変わる
Q:白石さんがMVPを受賞した理由である「CBTプロジェクト」とは、どのようなものですか。
白石:端的に説明すると、スダディサプリ上に新しくオンラインテストのプラットフォームを導入し、従来紙で提供していたものをCBT(Computer Based Testing)方式に変更する=テストのDXプロジェクトです。私は、このプロジェクト全体をリードする役割を担ってきました。
Q:なぜ、CBTが必要なのでしょうか。
白石:一番の狙いは、テストを生徒一人ひとりにとってもっと意味のあるものへと進化させることです。従来行われてきたアナログな運用の場合、紙の解答用紙を回収し、採点して結果を通知するにはどうしても約1ヶ月ほどかかってしまいます。これほど時間が空いてしまうと、高校生にしてみれば受検したテスト自体がすでに過去のものになっており、結果を見ても自分事に捉えづらい。模範解答を見て復習するといった行動につながりにくいことが課題でした。
その点、オンラインでテストを実施できれば紙の回答用紙を回収して採点者へ送付する必要はありませんし、採点も人の手がかからないため、翌日には結果をお知らせすることができます。そうすれば、高校生は記憶が新鮮なうちにテストの結果と照らし合わせて自分の実力を把握でき、その後の学習につなげやすくなる。このように、テストの方式を変えることで新たな学習体験を提供することが狙いです。
Q:今回の対象は学校内で実施いただいているテストですよね。オンライン化する影響は先生方にもあるのではないでしょうか。
白石:先生の負荷を減らすこともプロジェクトのもう一つの狙いです。従来の運用では、スタディサプリから問題用紙・解答用紙が入った段ボールを学校に送付しており、先生には試験当日に生徒へ用紙を配布して試験後に回収・送付していただく必要がありました。試験という性質上、先生たちは間違いなく回収できているかといったチェック作業にも時間をかけていらっしゃいます。こうしたタスクをなくして先生方の時間を創出することで、今よりもっと生徒一人ひとりに向き合いやすい環境を支援していこうと考えました。また、テストで間違えた問題や苦手な単元の振り返り指導にかかる先生の負荷を下げる意味でも、スタディサプリのオンラインプラットフォームでテストを実施し、結果を生徒個別の学習データと連携させてその後のフォローにつなげていきたいと考えています。
04. DXと同時に、テストを通した学習そのものの体験価値を新規開発
Q:CBTプロジェクトを進めるうえで、白石さんが挑戦したことを教えてください。
白石:既存のテストをただCBT化するだけでなく、せっかくならデジタルのメリットを活かして、今の世で必要とされていて、かつスタディサプリにしか出来ないテストを提供しようと、コンテンツ自体を新規開発することにトライしました。このお題は私がリクルートに入社しプロジェクトにメンバーとしてアサインされた当初から持っていたのですが、実は最初はまったく企画が通らなかったのです。事業の責任者にプレゼンをしても、「白石がコンサルタントなら100点の提案なんだけど、企画屋としてはつまらない」とバッサリ斬られてしまって…。今考えると、人の意見だけでなんとなくキレイにまとめてしまっていたのかもしれません。関係者の要望やマーケットの声を集め、あらゆる観点を考慮した結果、誰にも嫌われないけれど尖ったところもない平凡な企画になっていた。人の意見に耳を傾けるだけでなく、事業の当事者としての覚悟を持ち、自らの意思を企画に込めてはじめて良いプロダクトは生まれることを学びました。
Q:具体的にはテストをどのように進化させているのですか。
白石:生徒にとって本当に価値のあるテストを実現したいという考えのもと、「全員一律に同じ試験問題を解き、点数を競う」というテストの常識から疑って考え、「一人ひとりの実力に応じて出題する内容を出し分け、自身が学んだことを具体的にどの程度活用出来るのか測定できる」ようにしています。そもそも統一模試のような外部模試の意義は、偏差値を出す=相対的な実力を可視化することです。しかし、生徒にとって一番大切なのは一人ひとりが希望する進路を実現すること。目標が人それぞれなら、テストの中身も一つにこだわらなくても良いし、他人と競うだけでなく、進路実現に向けて自分自身の学びを深めれば良いと考えました。
また、みんなが同じテストを受けるからこそ、テストの内容が個人の実力に見合っていない場合もあります。ほとんど問題が解けず学ぶことを諦めてしまう人もいれば、問題が簡単すぎて進路を実現するための学びにつながっていない人もいる。それぞれの実力にあわせて、「問題が解けた手応え」と「解けなかった悔しさ」のどちらもバランスよく体験し、自身の実力を正しく見定めた上で、次に学ぶべきことが具体的に分かるテストこそ、生徒の学ぶ意欲を高められるテストだと考えました。
Q:生徒のためにテストをより良く変えたいという、自らの意思から生まれたアイデアなのですね。しかし、どうしたら実現できるのでしょうか。
白石:この発想は、リクルートの関連会社であるリクルートマネジメントソリューションズが人材採用のアセスメントツールとして開発・提供している「SPI」をヒントにしています。SPIは人によって出題が変わるように作られているので、すぐ近くで実現できているなら私たちの事業でも不可能ではないと考えました。また、生徒に合わせたコンテンツの提供という発想は、スタディサプリだからこそできたものでもあります。授業動画の視聴状況といった学習データや、スタディサプリ進路から取得できる志望校情報など、生徒個別のデータをCBTと連携することで、一人ひとりの学力や進路にあわせた問題を提供できると考えています。
05. 学校の先生たちに負けないくらいの当事者意識で、教育業界の進化を促したい
Q:プロジェクトは現在どのような段階なのですか。
白石:新規開発については現在絶賛進行中です。プロダクトの大枠を決めることはできたので、私自身はこれから営業組織と一緒にどう世の中に広めていくかに注力するフェーズ。紙と鉛筆のテストが当たり前だったからこそ、「デジタルなんてありえない」「問題を出し分けるなんて聞いたことない」という反応もあるはずですから、それを突破していくことも新たなチャレンジです。
Q:プロジェクトはまだ続きますが、ここまでを振り返って白石さん自身にはどんな学びがありましたか。
白石:やっぱり当事者意識の大切さですね。関係者やユーザーの意見に耳を傾けることも必要だし、ロジカルな正しさも大事なんですけど 、それだけでは企画として面白くないし、自分自身もつまらない。自分が見てみたい世界を実現するために、「自分はどうしたいのか」をど真ん中に置いて考えることがプロジェクトを良い方向に導いてくれると、実体験で学びました。
また、私は学校の先生たちと一緒に教育業界をより良く変えたいと思っていますが、先生たちと協業するには、リクルートにいる私たち自身が教育業界に対してどのような想いをもって向き合っているかが問われます。プロダクトの作り手とユーザーという関係ではなく、一緒に教育業界に向き合う当事者としての意思を示す大切さを感じています。
Q:最後に、今後取り組みたいことを教えてください。
白石:人生は社会に出てからの方が圧倒的に長いですよね。だからこそ私は、教育の価値を学校の中だけで捉えるのではなく、一人ひとりの人生により良い影響を与えるものに進化させたいです。それを実現するには、リクルートは絶好の環境。社内を見渡せば、就職、結婚、住まい…と人生の様々な出来事に寄り添っています。他事業で得た知見を借りながら、高校での学習体験はもちろん、未来の様々な可能性を提示できるような仕事がしたいです。
取材時期:2023年4月
記事中で紹介した事業(名称や内容含む)や人物及び肩書については取材当時のものであり、現時点で異なる可能性がございます。