Staff interview
#19
01. 担当者プロフィール
担当者プロフィール
- お名前: 赤土 豪一 / Goichi Shakudo
- 組織名: スクールプロダクトマネジメント部
- 入社時期:2014年 04月
02. 現場で試しながら作ったアプリで「やらされ感」のある進 路選択から脱却
多くの高校生にとって、「進路を考えましょう」と言われても、受験を迎える前から自分ごととして考えるのはなかなか難しいのが実情です。自分も教師役となってたびたび現場に足を運ぶことによって、「スタディサプリfor SCHOOL(デジタル版進路選択教材)」を作り上げ、受身な時間となりがちな進路指導授業を、自分の未来について考えるスイッチを入れる時間に変えた赤土豪一さんにお話を伺いました。
03. 自由研究的に作り始めた「スタディサプリfor SCHOOL」
Q:赤土さんは教育事業のどういったところにやりがいを感じているのですか。
⾚⼟:教育に関わらず、届ける相手が思わずわくわくと目を輝かせるような、新しい体験を届けたい、という思いで日々仕事に向き合っています。 その中で、教育の領域は、自分のプランニングをプロダクトへと活かせる範囲が多いことにやりがいを感じています。
Q:では、「スタディサプリ for SCHOOL」を作ったきっかけは。
赤土:進路事業はリクルート創業初期の事業として作られ、約50年に渡って、高校生を支え続けてきた事業です。「偏差値や知名度によらない、本当に自分がやりたいことをベースにした進路選択を」というコンセプトを掲げ、いわゆる「リボンモデル」を元に、高校生と大学・専門学校をマッチングするサービス になっています。
ユニークなのは、2つのチャネルがあることです。1つは、能動的に「スタディサプリ進路」というWebサイトを見てもらう「生活導線チャネル」。もう1つは「学校導線チャネル」で、「進学事典」は進路指導の紙教材として全国約2000の高校で活用いただいてきました。日々高校生の進路に対するスイッチを入れられる、という観点で全国の先生方にお喜びいただいています。
ただ、我々が提供してきたこれまでの50分授業には、かなり課題があると感じていました。まず30分くらいかけて紙で適性診断を受けて、その結果が分からないまま、索引を引いて目当ての学校を調べて資料を請求してもらう、というものなんですが、正直、高校生の視点からすると、決してワクワクできる体験ではないですよね。適性診断の結果も分からず、レコメンドもないままに、学校を調べていくという行程も、進路を本格検討する前の子たちにとってはハードルの高い設計だと感じていました。それゆえに、高校生側にも「やらされ感」があったと思います。
これをデジタル化したほうがいいよね、というアイデアは以前からあったんですが、まだ誰もやったことがなくて。自分のミッションではありませんでしたが、「なら、一回やってみればいいじゃん」と、予算を少し頂いて自由研究的にパートナーと一緒にアプリを作成し、関係性のある先生の学校で、放課後4人の生徒さんに集まってもらって、プロトタイプ版を試してもらったのが原型です。
Q:スタディサプリfor SCHOOLはどのように使われるのでしょうか。
赤土:まず、高校生にアプリ上で適性診 断を受けてもらいます。紙の場合は30分から40分かかっていたんですが、同じ質問数でもさくさく答えられるので15分、早ければ5分で終わります。しかもその場で結果を確認し、自分の性格や向いている分野を把握した上で学校を検索し、たくさんの写真も含めたリッチな情報を参照しながら学校を調べ、最後に資料請求してもらう、という体験になっています。
プロトタイプ版では、適性診断を行い、その子が満足できそうな学校を表示するところまでを作り、試してもらいました。すると、これまでにはないくらいに楽しそうに取り組んでくれたんです。またレコメンドに基づいて、今までのやり方であれば決して候補に挙がらなかったであろう学校に資料請求してくれる生徒もいました。この一歩を経て、紙での体験よりもデジタル体験の方が、よりワクワクする授業として成り立つし、高校生たちが能動的に取り組めると判断し、事業へとトスアップしたことで、本格的にミッションとして取り組ませてもらえることになりました。
Q:ですが、実現にはそこから2年以上かかったんですね。
赤土:やっぱり学校現場ってまだまだアナログな環境で、中にはスマホを使ってはいけないとか、持ち込みすらだめという学校もたくさんあります。そうした学校も含め、紙教材を活用いただいてきた2,000校すべてに移行いただくことはできないんじゃないか、という意見が当初はありました。それでも、学校にヒアリングを重ね、例えば「端末を貸し出す」など1つずつ解決策を考えながら、チームみんなで進めていきました。
課題としては果たして50分という時間内にうまく収まり、授業として成立するのか、生徒の体験としてうまくいくのかに加え、これまで紙の媒体でクライアントにお返ししてきたのと同じ効果が得られるか、それも商品ごと、セグメントごとにちゃんと効果を返せるかもポイントでした。
そこで2020年度は、全国500校で先行導入調査を行いました。この段階で、2000校のうち500校で「デジタルを一回試してください」と切り替えてやってもらったんですね。実現まで2年かかりましたが、ちゃんと授業として成立するし、効果も得られるということを確認できた上で、満を持して2021年4月にに無事リリースをすることができました。
04. まずは現場でやってみて、現場感を憑依させながら作り上げたアプリ
Q:開発を進めていく上で心を砕いたポイントは何でしたか。
赤土:僕自身も先生になって、プロトタイプ版を使って全国の高校で進路授業を続けてきました。新型コロナウイルスの影響で学校に行けない時にはZoomに切り替え、現場感を憑依させ、現場の担当者からの意見も全力で聞いてきました。時には、ポケットWi-Fiを50台持ち込んで混戦してしまったりという失敗もありましたが、現場でまずやってみることが何よりも大事だと思います。
Q:生徒から何かフィードバックはありましたか。
赤土:明らかに授業中の態度で分かります。生徒達の顔がよく見えると「やっぱりここは面白くなさそうだな」「ここでつっかえるんだな」とか、それから「先生方はこういう部分を面白く思ってく ださるんだな」とか。そういう現場の感覚をつかむことができれば、自ずと改善すべきところも分かってきます。
学校現場の辞書に「メディア」という言葉はありません。だから、ビジネス的にはメディアですが、教材としてきちんと仕立てなければいけない点には、特にこだわりました。アプリ本体だけでなく、ワークシートや授業スライドなどもすべて込み込みで提供しているんですが、それを作り上げる上でも、自分が授業をしてみないと、本当に現場に必要なものは見えてこなかったと思います。
Q:プロジェクトを進めていく上で、チームの中で心がけたことはありましたか。
赤土:進路事業には生活導線と学校導線という2つのチャネルがあることは、先ほど申し上げたとおりです。生活導線の方は、自分から調べてやってくる、どちらかというと能動的な生徒なんですが、学校導線というのは授業の中でやらされることですから、基本、受け身になってしまう。。だからこそ、例えば適性診断を組みこんだりなど、進路選択を自分ごと化するためのスイッチとして機能させようと、手を変え品を変え工夫しています。
ただリクルートが提供するサービスは基本的に生活導線がメインであり、能動的な人をターゲットに構築されることが多いです。このため、ほかの事業では、スイッチを入れるという作業は、そこまで重点視されることはないかもしれませんが、進路事業はそうではありません。これまで生活導線でのアプローチに慣れてきたエンジニアやデザイナーといったメンバーに学校導線の現場感をつなぎ込み、同じ目線を揃えていく点に留意しました。
Q:今後に向けてのビジョンを聞かせてください。
赤土:今回作ったアプリの名前は、「スタディサプリ進路」といった名前ではなく、あえて「スタディサプリ for SCHOOL」と名付けました。真に学校に寄り添えるサービスへと進化させていきたいと考えているためです。
進路だけではなく、主体性を育むサービスだったり、先生と生徒のコミュニケーションを図ったり。高校生たちがこのアプリを使って、自分たちの未来について自分なりのイメージを持ち、前向きに動き出せるようなきっかけを提供できるアプリに育てていければうれしいですね。
取材時期:2021年4月
記事中で紹介した事業(名称や内容含む)や人物及び肩書については取材当時のものであり、現時点で異なる可能性がございます。