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Staff interview

#26

新方針をいち早くキャッチし、前例のない「アプリ内課金」を問題なく実装

MVP

河津 裕貴

Hirotaka Kawazu

河津 裕貴
SECTION 01担当者プロフィールSECTION 02新方針をいち早くキャッチし、前例のない「アプリ内課金」を問題なく実装SECTION 03モノ作りがしたい——Androidアプリに限らず幅広い領域に興味SECTION 04いち早く情報をキャッチし、少数精鋭で対応作業を推進SECTION 05モノ作りからしみ出し、生の声を聞くことの価値をあらためて認識

01. 担当者プロフィール

担当者プロフィール

- お名前:河津 裕貴 / Hirotaka Kawazu
- 組織名:まなび社会人・語学プロダクト開発部
- 入社時期:2017年 04月

02. 新方針をいち早くキャッチし、前例のない「アプリ内課金」を問題なく実装

アプリの仕様や機能は、良くも悪くもプラットフォーマーの動向に左右されます。ENGLISHプロダクト開発部の河津裕貴さんは、GoogleがAndroidアプリ内課金に関するポリシーを明確化したことをいち早くキャッチし、不確実な要素の多い中で対応の必要性を感じ取って対応を進めました。前例がない中どのようにしてアプリ内課金機能を実装し、その知見を社内の他のメンバーと共有していったのかを伺いました。

03. モノ作りがしたい——Androidアプリに限らず幅広い領域に興味

Q:河津さんは新卒でリクルートに入社されたんですね。

河津:そうです。5年前に新卒でリクルートに入社しました。最初からモバイルアプリ開発を担うAndroidエンジニアとして入社し、スタディサプリENGLISHのグループに配属されたので、ずーっと一本道みたいな経歴です。

Q:ということは、学生の頃からモバイルアプリ開発に興味を持っていたのですか。

河津:あるスタートアップの会社でアルバイトに誘われ、そこで初めてエンジニアとしての業務を学びました。作り始めてからできあがるまでの過程が比較的速く、どんどんサイクルを回していった経験を通して、Webサービス全般、モノ作りが楽しいなと思ったことが原体験で、エンジニアになりたいなというモチベーションで入社しました。ですので、特にモバイルだけにこだわっているわけではありません。Andoridエンジニアのグループに属しつつ、バックエンドの担当もたまにしていました。

Q:自分たちの手で新たなものを作り、どんどん改良していけるところが好きなんですね。

河津:そうですね。0から1にしていくときは、目に見えてどんどんできあがっていくのがなんと言っても楽しいですし、できたものを改善していく場合も、アイデアを素早く形にでき、ユーザーの反応も速く見えます。常にモチベーションが高まる業界だと思っていて、この業界、すごく好きですね。

Q:業界という意味では、リクルート以外にも選択肢はあったのではないかと思うのですがなぜリクルートだったのでしょうか。

河津:リクルートって、とても大きな会社というイメージがあると思います。実際そうなんですが、就活の時に、組織風土や仕組みを変えていくのがとても速い会社だなという印象を持ちました。当時はまだ、内製のエンジニア組織ができたてでした。どうやればうまく回るのかが不透明で、ナレッジもあまりなかったと思います。そんな中で頻繁に組織構造や配置を換えたりしてPDCAを回している姿を見て、「この会社だったら悪い状態で居続けることはないだろう、よくないことがあれば自分でも変えていくことができるから、不満を持ち続けることはないだろう」と思えました。

04. いち早く情報をキャッチし、少数精鋭で対応作業を推進

Q:MVP受賞の理由は、スタディサプリENGLISHのAndroidアプリでアプリ内課金(IAB課金)への対応を進めたことでしたね。

河津:はい。Google社が2020年9月にアプリ内課金に関するポリシーを明確化し、僕たちスタディサプリENGLISHも、Google Playの課金システムを実装する必要があることが明らかになりました。それを受けてAndroidのアプリ内課金を実装するプロジェクトを立ち上げました。

Q:それ以前はどんな方式で課金していたのですか。

河津:Androidアプリの中ではなく、Webページに遷移し、そこでリクルートの「かんたん決済」を使う形で課金していました。iOS向けは「iOSアプリ内課金」を採用していました。

Q:Google社は2021年10月1日までの対応を求めていました。スケジュール的に厳しかったのではないでしょうか。

河津:サービスの根幹に関わるところなので、そもそもどのくらい工数がかかるか、正直最初は読めませんでした。調査を進めるにつれて、後から「実はここにも影響する」といったことが判明する可能性は十分にあり得たからです。そんな風に不確定な状態だからこそ、とにかくすぐにやろうと考えました。Google社の発表当日に気付いてすぐにアラートを上げ、「案件を詰めよう」と蹴り出し、あとは通常のフローに載せてプロジェクトを進めていきました。

Q:実際に手を付けてみての工数はどうでしたか。

河津:Androidアプリとしては事前の想定通りそこまで大変ではありませんでした。ただサーバサイド側はちょっと複雑で、定期購入や解約のボタンを押した際に、Google側からスタディサプリENGLISHのサーバに送られるコールバックを受け取るコンポーネントを作成し、制御する仕組みを実装しました。

今回はアプリ側だけでなく、バックエンドも含めたアーキテクチャレベルでのとりまとめに始まり、IDの命名規則の定義といった細かいところまでやっていきました。プロジェクトの最初の方で一気にインプットしたAndroidアプリ内課金の知識を踏まえて進めていきました。

Q:前例がないなかでの対応をうまく進めるため、何か意識したことはありますか。

河津:自分はAndroidアプリとサーバの両方で読み書きができて「土地勘」がある、いわばマルチファンクショナルなところがあったので、その強みを生かしてシステムの全体像を把握し、プロジェクトのとりまとめも自分で行っていくやり方を選択しました。というのも、当初は不確実性が高かったと言いましたが、調べていくとそこまで大きなプロジェクトではなさそうだということが見えてきたからです。大人数でよってたかってかからなければいけないプロジェクトではなく、どちらかといえば人数を絞り、密にコミュニケーションを取りながら進めていく方が適切だろうという肌感覚を持って、進めていきました。

Q:実際のチーム構成を教えてください。

河津:エンジニアとしては、Android、サーバサイド、iOS、Web、インフラ担当それぞれ一人ずつという構成で、自分はAndroid担当にあたります。主に自分とサーバサイドエンジニアの2人で中心となり、仕様策定からスケジュール管理、テスト計画まで取り組みました。システム理解の深いエンジニアが直接マネジメントや仕様策定を行うことで、コミュニケーションコストが削減され、全体的な生産性を高められたので、よかったなと思っています。一緒にやってくれた相方は、プロジェクトマネジメントやコミュニケーションが得意ではない僕の至らないところをサポートしてくれて、本当に感謝しています。

Q:世の中を見渡せば、炎上プロジェクトにはとにかく人を投入するなんていうアプローチもありますが、人数を絞ることで成果を挙げたんですね。

河津:はい。絞れるときは絞るというのが一つの解なのかなと感じました。関係者を少なくし、システムの全体像を理解している自分が開発から品質担保のテストまでをとりまとめ、実行することで、知識の面でもコミュニケーションの面でも、非常に高い質を保ってプロジェクトを進めることができました。結果として、特に問題なく機能をリリースできて本当によかったなと思っています。

もう1つ、Google社が打ち出した新しい方針にいち早く気付き、いち早く対応を切り出せたのも、こうした選択肢をとれた要因の一つだと思います。

Q:ということは、普段から業界動向にアンテナを張っているんですね。

河津:そうですね、AndroidやiOSの開発は、GoogleやAppleというプラットフォーマーに強く依存する面があるので、彼らが発表する機能やその最新情報をいち早くつかむのは、エンジニアとしてマストなことでもあります。必要だからやっている側面もありますし、やっているうちに好きになっている部分もあります。年を重ねて、深夜に海外のイベントをリアルタイムに見るのはだんだんつらくなってきましたが……。

Q:IAB課金に関する他チームとの情報共有はどのように進めたのでしょうか。

河津:「知見を共有した」というと、共有会を行って、みんなの前で僕が「IABとはこういうものです」と発表したようなイメージがあるんですが、そういうわけではありません。リクルートの共通アカウントの管理を行うAndroidアプリ管理横断チームの方と、「システム的にどんな連携が必要か」「このアカウントは別に扱うべきか」といった事柄を相談し、その過程でIABの知識を元に「ここはこうした方がいいんじゃないか」と提案していった感じです。

もう1つ、スタディサプリ本体のアプリも、同じ事情でAndroidのアプリ内課金を実装することになりました。ただ、スタディサプリENGLISHの方がちょっとだけ早く実装を始めていたこともあり、いろいろ僕に聞いてくださったんですよね。僕から共有したというより連携したという感じで、逆にこちらもいろいろと知見を共有いただきました。有意義な議論を進めることができましたし、シンプルに楽しかったので、本当に「聞いてくださってありがとうございます」という感じです。

05. モノ作りからしみ出し、生の声を聞くことの価値をあらためて認識

Q:では今回の経験は、自身の成長につながりましたか?

河津:エンジニアとしての業務から染み出して、プロジェクトのマネジメントやとりまとめ、経理やQuality Assuranceといったステークホルダーとのやりとりなども経験することができました。本来これらの業務はテクニカルプロダクトマネージャーという役割の方が担ってくれてるケースが多いですが、本案件についてはそれを僕に任せてくれたことに感謝しています。一定の信頼関係があることが前提ですが、手を上げたら任せてくれるのはリクルートのいいところですよね。

Q:特に強く感じたことはありますか?

河津:エンジニアって、ものを作ることに集中するのもいいことだと思うんですが、今回のプロジェクトを通じて、ステークホルダーと直接話したり、一次情報を得た上で求める仕様を作ることの価値をあらためて認識しました。実際にカスタマーの声、今回の場合は課金の管理画面に触れる社内の方の声を聞いて正しいものを作ることの大切さを学んだように思います。

それから、システムの細かいところまで把握しているエンジニア自身が、ソフトウェア品質を担保するQAの管理や実行、とりまとめに携わることの価値も認識しました。やはり、システム全体像を理解していると、抜けや漏れなく見るべきポイントの項目を作れるので、筋もよくなるのかなと感じます。各エンジニアに聞いて回るプロジェクトマネージャーの負担軽減にも寄与できるなと思います。

Q:それを踏まえて、今後チャレンジしたいことは何ですか?

河津:今回はプロジェクトメンバーを絞った上で、品質高く進めるところに価値を出すことができましたが、それができないようなプロジェクトもあると思っています。そういう事情の違うプロジェクトの中で、また別のアプローチを模索してきたいというのが次のチャレンジです。自分はどちらかというと、その場その場で求められている役割、必要そうな役割を感じ取ってやっていく立ち位置が多いんですが、今後も、必要そうな役割を見つけてやっていけたらいいなと思っています。

取材時期:2022年5月

記事中で紹介した事業(名称や内容含む)や人物及び肩書については取材当時のものであり、現時点で異なる可能性がございます。

スタディサプリの開発主体であったQuipper Japanは組織再編のため、2021年10月に株式会社リクルートに事業譲渡しています。

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