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Staff interview

#30

戦後最大規模の教科書改訂への対応、鍵を握ったのは働きやすいチーム作り

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新課程対応リーディングチーム

Leading Team

新課程対応リーディングチーム
SECTION 01担当者プロフィールSECTION 02よりよい教材を、より広い裾野に届けたい思いでスタディサプリにSECTION 03改訂に向けて走り出してから気がついた、ビジョン共有や業務分掌の重要性SECTION 04さまざまな関係者にとって最善の学びの形をスタディサプリで模索

01. 担当者プロフィール

担当者プロフィール

- お名前:野村 理絵 / Rie Nomura
- 組織名:コンテンツマネジメント部
- 入社時期:2018年 07月

担当者プロフィール

- お名前:北川 哲 / Satoshi Kitagawa
- 組織名:コンテンツマネジメント部
- 入社時期:2018年 09月

教科書は定期的に改訂されますが、中でも2022年度の高校教科書改訂では、戦後最大と言われるほど大規模な変更が加わりました。各教科で科目が大きく変化するだけでなく、学習内容にも新たな事柄が盛り込まれるなど、それまでとは全く異なる教材作りが求められます。その対応作業に取り組み、無事にリリースを成し遂げたのが、高校コンテンツグループの北川哲さんと野村理絵さんです。チームそのものの在り方を見直すなど、苦労を重ねてどのようにコンテンツを作成していったのか、この一年を振り返ってもらいました。

02. よりよい教材を、より広い裾野に届けたい思いでスタディサプリに

Q:お二人の経歴を教えてください。

野村:私は大学院で、アフリカにおける初等女子教育について専攻しました。最初はそこまで深い使命感があったわけではありません。興味を持ってさまざまな論文や担当教授の著書を読むうちに研究に携わり、大学院では実際にケニアに行ってフィールドワークも行いました。現地で生徒と一緒に授業を受けて衝撃を受けたのが、誤った内容のテキストを使っていたり、定規を使わずに直線について学んでいたりする状況です。そこで「正しいことを正しく伝えられるものを作る」ことの重要性を感じました。

正しいことを教えられるコンテンツを作る仕事をしたいという理由から、教育出版系の会社に就職し、前半は英語教材の編集者を、後半はアダプティブ教材の開発に携わっていました。ただ、前職ではターゲット層が限られていたため、もっと広い裾野に届けられる教材を作りたいと考え、4年前にリクルートに転職してきました。

北川:私は大学時代、個別指導塾の講師をしていました。生徒の成績を伸ばすため、紙のプリントや教材をベースにいろいろと工夫していきました。そういった中で、ちょうど就職活動をする頃に、世の中でスマートフォンが普及し始めました。デジタルデバイスが登場し、誰もがいつでもWebにアクセスできる環境が整えば、新しい教育コンテンツを作り、教育をもう一段、良いものにしていけるのではないかと考えて教育系企業に入社し、数学の教材を5年半担当しました。

そんな中、スタディサプリは「生徒のあるべき姿」を深く考えた事業であり、しかも実際に提供している動画コンテンツのクオリティが高いことに感銘を受け、リクルートに転職してきました。野村さんとほぼ同じ時期のことです。

Q:その頃から同じチームでコンテンツ作成に携わってきたのですか。

北川:そうです。私が主に理系科目を、野村さんが英語を、もう一人の担当者が文系科目を担当する形で、三人で緩やかに助け合いながら五教科のコンテンツのディレクションをしていました。スタディサプリの授業を作っていただく先生方にご依頼し、教科横断での企画や要件定義を行い、組版や内容チェックの体制を構築するといった一連の業務に加え、中長期的なロードマップを作ったり、コンテンツ作成に必要な予算の確保も業務に含まれています。

03. 改訂に向けて走り出してから気がついた、ビジョン共有や業務分掌の重要性

Q:そこに高校教科書の改訂という話が降ってわいてきたんですね。

野村:はい。戦後最大規模の改訂でした。

北川:最初は何がどうなるのかまったくわからず、悲鳴すら出ないほどでした。

Q:どのようなスケジュールで進めていきましたか。

北川:何がどうなっているかがわからない状態でしたから、まず、僕たちがやらなければいけないことは、必要な対応がどのくらいあるか把握することでした。そのため、2020年夏に物量を確認する予備プロジェクトを立ち上げました。二ヶ月ほどかけて調査を進め、物量をあらかた見立てた時点で、「これは大きなプロジェクトになる」ということがわかり、上長とも相談しながら2021年冬から新たなメンバーを迎え入れ、本格的に改訂プロジェクトを開始しました。

Q:具体的に何が大変だったのでしょうか。

野村:社会では新しい科目が誕生するなど、単純に、改訂すべきコンテンツの物量が非常に多いという意味です。それ以外のコンテンツ作成も自転車操業で進めていた中、これだけの物量に対応しなければなりませんでした。しかも学習指導要領改訂ですから、対応しないわけにはいきません。もしできなければ教育会社として確実にユーザーの皆さんに提供すべきコンテンツが提供できず、延いてはプロダクト自体の価値の毀損となることは明白ですが、人はいないし、スケジュールにも余裕がないため非常に大変でした。

Q:その状況を解決するため何から着手したのでしょうか。

北川:まず体制人数不足は明らかだったので急いで採用を進めてもらいました。また、サービスの責任者が期待するラインと、僕たちが実現しようとしているラインがずれてしまうと、事業方針にも影響が生じてしまいます。そこで、どこまで新課程に対応するかチーム内で合意を取った上で、各サービスの責任者に「我々はここまで対応しようと考えていますが、認識はずれていませんか?」と確認を取り、連携していきました。

Q:炎上する開発プロジェクトでは、単純に人を増やすだけで共通の目標を確認しないで進めてしまうと、大変さの度合いが増すと聞きますが……。

北川:実は、まさにその状況にはまりました。三人チームの時は「あうんの呼吸」で業務を進めていたため、「どこに向かうのか」というビジョンの共有や責任領域の分担、業務分掌の重要性をまったく認識できていませんでした。新規のメンバーにとって仕事のやりづらいチームを作ってしまった結果、新たに四人加わってもらったにもかかわらず、能力を発揮しづらい体制を作ってしまったのです。2021年の初夏になってようやくこの現象に気づき、軌道修正することにしました。

野村:それまでの三人チームでは、大きな裁量を与えられ、仕事が楽しいということもあり、なんとなくゴールに突き進んでいく体制でも成り立っていました。ですがこの時点で、「自分は何をどこまでやるべきなのか」「そもそも何のための取り組みで、向かうゴールはどこなのか」が明確になっていないと困るという当たり前のことに、ようやく私たちも気付きました。

Q:そこから、何をどのように改善していったのでしょうか。

北川:後追いになりますが、「誰がどこまで責任を持っているのか。そこから先は誰の承認を取るのか」といった業務分掌の整理を、皆と会話しながら進めました。そのための資料も作成しました。

野村:あらためて「キックオフ」も開催しました。いろいろな事柄が不明確なままプロジェクトが進んでしまい、私たちもメンバーもストレスを感じる状態になっていたため、お互いが何を思っており、どこにどんな不安や不満を持っているかを吐き出す場を設けたのです。メンバーにとって何が懸念か、どのような観点で不安を抱えているのかを把握した上で、どう改善していくかを話し合いながら進めていきました。

こうしたプロセスの中で、決めるべきところについては横断的なルールも、チームで作成しました。その一つが「クリエイティブルール」で、デザインの観点で押さえるべき事柄をまとめたものです。また、教材作りにおいて素材の著作権管理は非常に重要で、同じ素材でも使ってもいいケースと使えないケースがあります。そうしたコンプライアンス的な観点からのルールも整備しました。もう一つ、キックオフの中で私が印象に残っているのが「プレモータム」です。

Q:それはどんな取り組みですか。

北川:プレモータムという言葉は、日本語に訳すと「事前検死」という意味です。本当に死んでしまう前に、「もしこのまま過ごしていく中で自分が死ぬとすれば、死因は何になるか」を明らかにしていくアプローチです。これを今のチームに適用し、現状のまま検死業務を進めた場合、この先どんな問題が起こるのか、ゴールが達成できない場合、最もリスクの高い原因は何かを皆で考え、背景にある要因を探って解消しようとする試みです。

Q:この先転びそうな場所を洗い出し、段差があれば事前に埋める感じですね。こうした取り組みによって、ようやくスタートラインに立ったわけですね。

北川:そのとおりです。また、業務分掌もあらためて仕切り直しました。それ以前は、私と野村さんが全体を仕切り、他の皆さんに動いていただくトップダウンに近い形に、無意識のうちになってしまっていました。しかしそれでは業務に納得感が得られず、せっかくのプロジェクトメンバーの高いスペックを無駄にしていました。そこで、二人で全部見るのではなく、横断的なルールを決めた上でチーム全員がそれぞれの役割を持ち、協力しながら整えていくやり方に変えていきました。

Q:わかっていてもなかなか直せない部分はありますが、よく修正できましたね。

北川:言い訳になりそうですが、「やったつもり」「伝えたつもり」になっていたり、おかしい状態に陥っていても「何とか回っている気がする」のできちんと確認していなかった部分があり、惰性で働きにくい形のチームになっていました。ようやくチームとしての問題点に気付き、あるべき姿にきちんと巻き直すことができたと思います。

Q:チームの体制を整えた次のステップとして、コンテンツそのもののクオリティについてはどんなことに留意しましたか。

野村:ディレクター同士でかなり深く議論しました。教材は、伝えたいことを伝えればいいというものではありません。伝えたい内容が意図した通りにユーザーに届くことが重要です。この目的を実現するため、「どこにどんな要素を配置すれば、ユーザーにとって学びやすい教材になるか」を、学習のためのテキストと動画、確認問題それぞれについて時間をかけて議論していきました。

北川:デジタルデバイス上に表示するため、文字の大きさ、読みやすさは入念に、チームで検証しました。その際、仕切り罫を画面のどこに引くと見やすくなるかといった細かなところまで意識しました。

野村:ヘッダーに情報をわかりやすく配置し、自分が今、どの講義のどのパートを学んでいるかを把握できるようにもしましたね。

Q:そういった細かな部分にこだわりつつ、数百講義分のコンテンツを無事作り終えたんですね。

北川:社内の関係者はもちろん、執筆・動画授業をご担当いただいた先生方や編集プロダクションの方々など、プロジェクトに関わるすべての方々にご協力いただき、ほぼ完遂できました。どうしても無理なところもありましたが、そこは事前に担当ディレクターが見立てを立て、「どうすればできるか」という代替案を用意してくれたため、それに沿ってあらためて関係各所と調整し直すことができました。

野村:私たちだけでなくディレクターの皆さんが肝でした。スケジュール通りに進んでいるのか、いないのか、もし動けないならばどこがネックになっているのかをキャッチしてもらい、それを私たちがとりまとめていきました。原稿が遅れてしまうならばその理由は何かを分析し、「こうすれば時間をかけずにできるのではないか」と議論した結果をフィードバックするなどの工夫をしました。「じゃ、あとはどうぞよろしく」と丸投げしていると、何もアラートが上がらないまま、ある日リリースできないことがわかって大騒ぎになる恐れがあります。そういった事態に陥らないよう、チェック機能を持たせたこともポイントだったと思います。

Q:一連の改訂対応を終えて、フィードバックはありましたか。

北川:学校向けの営業担当から、「新課程にきちんと対応してくれたので安心して販売できた」といった声をもらいました。また今回は、僕らのこだわりとして、理科では実験動画を、社会には資料の動画・画像を組み入れる工夫をしました。こうした映像資料も非常にわかりやすくていいという声をいただき、本当にうれしく思います。

野村:社内SNSには、Twitterのつぶやきを拾ってきて表示するチャンネルがあります。そこで「使いやすい」「学習しやすい」といった声を見つけると心からうれしいですね。

04. さまざまな関係者にとって最善の学びの形をスタディサプリで模索

Q:これから取り組んでみたいと考えていることはありますか?

北川:大きく2つあります。1つはコンテンツディレクターとして、スタディサプリという事業が目指す世界と、学習としてのあるべき世界のバランスをうまく取っていくことです。スタディサプリには主に学習動画、テスト、学習履歴の蓄積という3つの機能がありますが、それらをもっともいいバランスで掛け合わせ、皆がやりたいと思っていることを実現していきたいと考えています。僕たちコンテンツ担当が考える最善のものという意味だけでなく、実際に使ってくださる生徒さんや学校の先生、アプリの責任者など、いろんな方々にとっての最善の形を作っていきたいと思います。

また、デジタルデバイスで動くスタディサプリだからこそ作れるコンテンツもたくさんあると考えています。予備校の授業ですと60分単位、90分単位の授業という制約がありますが、スタディサプリはそうした枠をすべて取り払い、生徒さんにとって最善の指導方法を考えることができるはずです。その模索を続けていこうと思います。学習履歴の蓄積やモチベーション維持など、他にもデジタルデバイスならではの良さを生かしていければと思います。

野村:私は今年、英語だけでなく社会の新規講座の制作メンバーにもなりました。十数年ぶりに教科書を開き、一から学んでいるところです。こうした感覚を持っている今だからこそ、新鮮な視点で、どのような見せ方や伝え方ならば生徒さんにとってわかりやすく、先生にとって教えやすい内容に落とし込めるかを考え、授業案を作っていきたいと考えています。先ほど触れた動画や図版も取り入れていきますが、たくさんあればいいというものではありません。先生方と一緒に考えながら、効果的な構成を検討していきたいと思っています。

チームのリーダーという立場で大切なのは、体制作りと、その体制にメンバーが納得感を持って働けることだと思います。負荷が特定のメンバーに集中したりしないようケアしつつ、無理を言わない関係性を作って働きやすさを整えていきたいですね。

そして中長期的には、幼少教育にとても興味があるので、低学年層、特に幼少の子どもたちに向けた教材作りにいつか携われたらと考えています。

Q:リクルートで働くことの良いところは何でしょうか?

北川:1つは、とても風通しが良いことです。数学の担当者と理科の担当者で要件の調整を行う場合、リクルートでは、隣の席にちょっと話しかけて合意が取れれば終わります。教科間はもちろん、他の部門との間でもフランクに会話ができ、素早く意思決定が行われます。しかも、組織の壁に阻まれたりポジショントークに偏ることなく、「スタディサプリ全体としてこうあるべきだから、互いにこうした方がいいだろう」とフランクに会話ができるところがいい会社だと思います。

もう1つは、制約条件にあまりとらわれないことです。何かを議論するときも、「今まではこうだったから」ではなく、「あるべき姿は何か」に立ち戻って、生徒や先生方にとって最も良い形を目指すためにどうすべきかを考え、結論を下していきます。ですので、決まった事柄に対して納得感を持って仕事をすることができます。そこは本当に素敵なところだと思っています。

野村:北川さんと重複する部分もありますが、まずは上長も含めて柔軟性があることです。フォーマットはありますが、そこから逸脱したことを提案しても頭ごなしに否定されることはありません。まずは話を聞こう、という姿勢で耳を傾けてもらえ、いいとなれば採用されます。

二点目は、物事がスピーディに決まっていくことです。判子が押されるまで物事が進まないということはなく、Slack上で意見を出し、そこで議論が進み、スムーズに物事が決まることも多いです。Slackにはいつでも何でも投稿できますし、気軽に上長にダイレクトメッセージを送ることもできます。

最後は、裁量が大きいことです。今回の改訂対応に向けた体制作りもそうでした。我々はこれを、誰かにやれと言われてやったわけではありません。必要だと判断したからボトムアップで実行したのであって、それを誰かが否定するわけでもありません。自分の余力を見極める必要はありますが、落ちている仕事を拾えるだけ拾い、自分で自由に裁量を決められる職場だと思います。

取材時期:2022年4月

記事中で紹介した事業(名称や内容含む)や人物及び肩書については取材当時のものであり、現時点で異なる可能性がございます。

スタディサプリの開発主体であったQuipper Japanは組織再編のため、2021年10月に株式会社リクルートに事業譲渡しています。

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