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Staff interview

#24

プロマネ一人でできることはほとんどない——周囲を巻き込み、活用事例につなげる

MVP

増田 稚奈

Wakana Masuda

増田 稚奈
SECTION 01担当者プロフィールSECTION 02プロマネ一人でできることはほとんどない——周囲を巻き込み、活用事例につなげるSECTION 03元々抱いていた「教育の質をいかに底上げするか」という問題意識SECTION 04現場の声を拾い、壁打ちを繰り返す中でまとまっていったアイデアSECTION 05壮大かつ答えのない問いに向き合い続ける仕事に感じるやりがい

01. 担当者プロフィール

担当者プロフィール

- お名前:増田 稚奈/ Wakana Masuda
- 組織名:スクール学習プロダクトマネジメントグループ
- 入社時期:2019年 06月

02. プロマネ一人でできることはほとんどない——周囲を巻き込み、活用事例につなげる

学習効果を上げていくためのさまざまなアイデアを温め、実行するだけでなく、生徒の学力向上という結果が出るところまで伴走した活用事例を作り上げていったのが、スクールプロダクトグループの増田稚奈さんです。同時に、限られた期間でリリースにつなげていくために、内製と外注開発を組み合わせたハイブリッド開発モデルを構築したり、外部のパートナーとのアライアンス構築にも取り組みました。「一人でできることはほとんどない」と、周囲を巻き込みながら成果を出していった増田さんに、背景を伺いました。

03. 元々抱いていた「教育の質をいかに底上げするか」という問題意識

Q:増田さんがリクルートに入社したきっかけを教えてください。

増田:もともと総合商社に勤めており、メディア系の事業企画、商品企画など、今とは全く違う業務に携わっていました。やりがいのある仕事でしたが、元々個人的に、教育の質をいかに底上げするかに関心があり、事業企画と教育を掛け合わせるところにチャレンジしたいなという思いがわき上がってきまして。それで、ご縁があって2019年6月に入社しました。リクルートの中には商社出身の人はあまりいないので、変わったルートかもしれません。

配属されたのはスクールプロダクトグループで、プロダクトマネージャー(以下、プロマネ)を務めることになりました。学校向けスタディサプリのサービス・商品企画担当として、主にWebサービスの新規開発やエンハンスなどに携わっています。

Q:今回MVP受賞の対象となった「学習効果が上がる機能」とはどんなものですか。

増田:私が担当しているのは、スタディサプリの動画やテストといったコンテンツを配信する機能や、学習状況を先生が確認できるように管理画面で可視化する機能、それを元に声がけにつながるコミュニケーション機能などのプロダクトマネジメントです。学校向けのサービスですから、第一のユーザーは先生です。ですから、第一に先生方の学習指導の効果を最大化するための機能やコンテンツを開発することを目指し、その先にいる生徒の学力向上をサポートできるコンテンツを作っていくところにも重きを置いてきました。

前年度は、「先生の学習指導を最適化するためにこんなことをやりたいな」と、2〜3年前から温めてきた企画をいくつかリリースすることができました。具体的には「はかる、わかる、いかす」のステップを定義しました。生徒の学習理解度を先生がしっかり正しく測れる(=はかる)、その結果を可視化することで「誰がどこでつまづいているか」を判別できるようにする(=わかる)、その結果に基づいて個別最適なフォローを行う(=いかす)という、3つのステップに沿った機能とコンテンツをリリースしました。

その一例が、単元ごとに理解度を測れる「単元テスト」とそこからの「フォローアップ配信」機能です。つまずく学習項目は生徒ごとに異なります。そのつまづいた項目に対応した学習内容を、生徒それぞれに個別最適な形で「学び直し課題」としてクイックに配信できる機能を作ることで、一度宿題を出して終わりではなく、つまづきに応じたその先の学び直しまでを一気通貫で実行できる仕組みを実現しました。

Q:この機能ができる前はどうだったんでしょう。

増田:今まで、生徒の学習理解度をはかり・わかり・いかせるきっかけは定期テストくらいしかありませんでした。紙のテストを配布し、その結果を先生が目視したうえで、個別に生徒一人一人に「このプリント、追加でやっておいてね」という具合にフォローをしていたのだと思います。それをサプリを通じて、Web上で何回か操作をするだけで、はかる→わかる→いかすまで実現できるようになった所が、一番のポイントだと思います。

今回、単元テストという単元ごとの理解度を測ることができるコンテンツを作り、その結果を小問ごとに可視化する画面も準備し、さらにそこからフォローアップ配信機能として、例えば「正答率が80%以下の生徒に学び直し課題を配信する」などと設定することで、先生がその都度生徒それぞれのテスト結果を追いかけなくても、個別最適の学び直しまでをシームレスに完結できる仕組みをご提供できるようになりました。

04. 現場の声を拾い、壁打ちを繰り返す中でまとまっていったアイデア

Q:このアイデアはどこから生まれたのでしょうか。

増田:私は教育業界をほぼ全く知らないところからスタートしたので、とにかく現場の声をたくさん聞きにいくことを意識しました。最初は点と点なんですよね。そこから、例えば先生の成功体験や理想的な指導の型のような「n=1」の情報を引き出していくと、だんだんと点と点が繋がっていき、「今のスタディサプリの課題はここにあるから、解決するためにこういうものを作ろう」という感じで、体系的にまとまっていったイメージです。

Q:まずは現場の声からなんですね。

増田:そうですね。あとは、開発メンバーや社内外のステークホルダーの皆さんとひたすら「壁打ち」をしました。実は、最初の仮説は全然違うところにあったのですが、「いや、それは本当の課題じゃないんじゃない?」とか「実現する方法は他にもあるよね」といったアドバイスをいただきながら仮説検証を繰り返し、ステークホルダーも含めたワンチームで一緒に企画を作ってこれた、と思っています。

Q:ポイントとして、実際に数字という成果が出ていることが挙げられますよね。

増田:そうですね。プロマネって、チームを巻き込んで開発してリリースするところまでが実際めちゃくちゃ大変なので(笑)、そこをゴールにしがちなんです。けれど、理想の状態を作って終わりではなくて、ちゃんと学習成果が上がっているところまでを実現するのがプロマネの使命なのだ、ということを日々意識していました。

そこで昨年、「活用伴走プロジェクト」というミニプロジェクトを実施しました。営業部と連携して、偏差値帯別に数校ずつご協力いただけるモデル校を作り、単元テスト→講義からのフォローアップをどのように活用できるか、先生と運用方法を相談しながら実際に活用いただき、PDCAを回す取り組みです。その結果として、定期テストの前に単元テストで試験範囲に取り組み、フォローアップまでやりきることで、きちんと取り組んだ生徒は平均点が大きく向上した、という事例を、各校で作ることができました。

これは営業部からすれば、営業トークとして活用できる事例が作れたことになります。また開発メンバーにとっても、これまでは「プロマネはいろいろ言うけれど、作って出したら終わりだよね。で、本当にそれって使われているの?」というモヤモヤがあったと思いますが、しっかり事例を作って共有することで、開発メンバーのモチベーション向上にも繋げることができたのかな、と思っています。

Q:他にも成果がありますよね。

増田:はい。2つ目は、内製と外部のパートナーを組み合わせたハイブリッドな開発体制を構築したことです。プロマネとして次年度以降のプロダクト戦略を検討した際、やりたいこと(≒開発計画)に対して開発リソースが足りていない状態でした。そこで、これまでは「優れた内部のエンジニアの力でいいものを作ることが、スタディサプリの提供価値の源泉である」という大前提の下に意思決定をしていたのですが、もちろんその前提はその通りであり理解しているという点を踏まえつつ、「必ずしも全てを内製する必要はないのではないか?」という提案をしました。

具体的には、紙で学校に提供しているテストをオンライン化するComputer Based Testing(CBT)というプロジェクトを検討していました。このプロジェクトにおいて、考えられる必須要件は何か?それを実現するために本当に全部内製である必要があるのか?といった事柄をエンジニアやデザイナーと一緒に洗い出し、その結果「自分たちで知見を貯めていきたいから内製した方がいいよね」というところと、「既に世の中に同様のシステムがあり、その知見を活用して作ってもらう方がいいよね」というところを組み合わせた方がいいんじゃないか、と提案しました。

外注と内製の掛け合わせは自組織では未経験だったため、周囲から懸念も多くあがっていたのは事実です。けれど、「何のためにこれをやるんだっけ」「本当にこれって内製する必要があるんだっけ」といった事柄を一つ一つ洗い出し、合意をとった結果、最終的にパートナー選定・推進まで実現できたところがポイントだったかな、と思っています。

Q:外注を組み合わせると、コミュニケーションコストの増加などが起きそうですが……。

増田:確かに問題がないわけではないのですが、事前にパートナー候補の方と弊社の開発チームを含めたメンバーとでコミュニケーションの機会を意識的に作り、開発の進め方、さらには組織のカルチャーがちゃんとマッチするかを見た上で選定しました。当初から論点もリスクも大きい案件とは認識していたので、やりたいことがふわっとしている状態から前広にステークホルダーを巻き込んで情報共有し、懸念になりそうなところを洗い出し、一つ一つ潰していきました。

Q:かかる労力は大きかったのではありませんか。

増田:確かに振り返ると大変な時期もありましたが、周囲のライトパーソンの協力が得られたことが大きかったかなと思っています。私一人が全部やるのではなくて、うまく役割分担することができたのかな、と。やはりプロマネは提案者なので、自分で何でもやりたがってしまうのですが、実際一人でできることはほぼありません。コードを書けるわけでもなければ、コンテンツ制作も、デザインもできません。勿論プロマネの中にはできる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は一切できません(笑)。その中でプロマネのやるべきことは、「なぜこれをやるのか?この案件/施策にはどのような意義があるのか?」という、”Why”を徹底的に考え抜き・みんなに共感してもらうこと、だと思います。本当に、それしかやらなくてもいいんじゃないか、というくらいです。

これは、リクルートという会社の良い所にも繋がると思うのですが、ビジョンに納得感さえあればみんながついてきて、協力してくれる環境と言うのが大きいですね。今回も、「なぜ外注を使うのか?」という問いに対し、具体的にどんなメリットが開発側やユーザーにあるのかを最初に合意をとり、皆を巻き込んでいけた所が大きかったと思います。

05. 壮大かつ答えのない問いに向き合い続ける仕事に感じるやりがい

Q:一連の施策を伺っているとフットワークの軽さに驚きます。最初の、教育の格差をなくしたいという思いがあるからこそでしょうか。

増田:そうですね、やはり教育のアップデートに携われているという実感が、自分の一番の原動力です。実際に先生方がサービスを使ってくれて成果が出ている姿を目の当たりにすると、心の底から情熱がわき上がってきます。そういう瞬間、瞬間が、自分の糧になっています。

もう一つ、リクルートで働く中で生まれてきた気持ちとして、「チームで価値を創出する」ことにもすごくやりがいを感じています。自分一人では何もできませんが、これが実現できたらいいよねというビジョンに共感してもらえる仲間と、一緒にもがき・楽しみながらゴールを達成するというプロセスを、心から楽しんでいます。

Q:今後はどんなことにチャレンジしたいですか。

増田:まず足下では、先ほど紹介した活用伴走プロジェクトのように、「結果を出せた事例を作る」ところまで責任を持って進めていく取り組みを継続的にやっていきたいと思います。また、CBTプロジェクトについても、来期以降のリリースに向けて、クライアント・ユーザー目線を忘れず、要件定義からF/S(フィジビリティスタディ)~リリース後の運用まで、責任を持って整備・実現していきたいです。

中期的には、スタディサプリを学力を向上させるだけでなく、「進路実現に直結するプロダクト」に進化させていきたいと思います。スタディサプリには進路領域のサービスもあるので、単に学力が上がるだけでなく、例えば進路希望を踏まえて最適化された学習内容を提案したり、志望校に合格するためのレコメンドを行うといったところを、学習のデータと進路のデータを掛け合わせてできるのではないか、と考えています。

そして4月から任用いただいたスクール学習プロマネGのグループマネージャーとしては、自身のプロマネとしての3年弱の経験を、周囲のメンバーに共有知として広げていけたらいいなと思っています。開発チームや営業の皆さんと協業する上で大事にすべきことなど、プロマネの極意というと大袈裟ですが、知見やTipsを伝えていければと思います。プロマネは正直考えることの幅は広いし、ステークホルダーも多岐にわたるので、めちゃくちゃ忙しい!と自負しているんですよ(笑)。でも、自分が実現したいものを実現するためにどう動くべきか?を、自分自身で考え、進めていく部分が大きい仕事ですから、何よりプロマネ自身が楽しんでやってほしいし、そんなプロマネだからこそ味わえる仕事の醍醐味みたいなものを、自分がこれから伝えていけたらいいな、と思っています。

Q:ご自身も楽しいですか。

増田:はい。「自分らしく学び、生きられる世の中を」というスタディサプリのビジョンを実現するために、プロダクト視点で何をやっていけばいいのかという、壮大かつ答えのない問いに向き合い続ける仕事ですが、そこで自分なりに「こうあるべき」というものを打ち出し、同じく思いを持った仲間を巻き込んでチームで進んでいける。さらにはそこに大きな裁量を与えていただき、主体的に推進していける。そのような貴重な機会を得られる環境というのは、やはりリクルートならではだな、と改めて思います。

取材時期:2022年4月

記事中で紹介した事業(名称や内容含む)や人物及び肩書については取材当時のものであり、現時点で異なる可能性がございます。

スタディサプリの開発主体であったQuipper Japanは組織再編のため、2021年10月に株式会社リクルートに事業譲渡しています。

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