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Staff interview

#14

データで作る、「営業と先生がお互いを褒め合える」世界

MVP

濱松 雄希

Yuki Hamamatsu

濱松 雄希
SECTION 01担当者プロフィールSECTION 02データで作る、「営業と先生がお互いを褒め合える」世界SECTION 03「先生にどう伝えればいいか分かる」ところまでがデータのミッション SECTION 04ただExcelを出して終わりにしない、行動できるデータを見て分かる形で提供SECTION 05「データグループは仕事をしなくても会社は回る」? 真の価値はアドオンに

01. 担当者プロフィール

担当者プロフィール

- お名前:濱松 雄希 / Yuki Hamamatsu
- 組織名:データソリューション部
- 入社時期:2020年 01月

02. データで作る、「営業と先生がお互いを褒め合える」世界

2020年3月から4月にかけて、新型コロナウイルスの拡大防止のため全国の小中高校で臨時休校が続きました。その間、子ども達の学習を支援する手段として注目を浴びたのが、スタディサプリをはじめとするオンライン学習サービスです。無償提供措置もあって、利用者も問い合わせが急増する中、サービスを確実に提供し、学校の先生方をフォローするために活用されたのが「データ」の力でした。どのようにデータを生かして営業活動を支援してきたのか、そして今後の営業戦略に生かしていくのかを、データソリューション部の濱松雄希さんに伺いました。

03. 「先生にどう伝えればいいか分かる」ところまでがデータのミッション

Q:濱松さんのお仕事について教えてください。

濱松:スタディサプリの学校向け営業のデータ活用がメインのミッションです。営業の方々、そしてその先にいる学校の先生方にスタディサプリをしっかり使ってもらえるよう、データで支援していくことが使命です。

具体的には、データグループから、ダッシュボードを通してお客様の活用状況をフィードバックすることで営業がお客様と話しやすくなること、つまりデータを通してよりよい「顧客接点」を実現することが役割となっています。定性的に「先生、どうですか」といった具合に何となくアポを終わるのではなく、データを使って具体的に「今の利用状況はこうなっており、ここが良いけれど、ここは改善の余地があります。だからこのようにしましょう」と営業を介してお客様に伝えることで、顧客接点を高めていこうとしています。

Q:一口に「データを使った顧客接点の向上」と言うのは簡単ですが、実践はなかなか難しそうです。

濱松:そうですね、これはリクルート全体にとっても課題だと思っています。というのも、営業が顧客接点に対してデータをどう活用するかについては、まだ「こうすればいい」という解がないんですよ。自分たちで、仮説ドリブンで道を探りながらゴールを目指し、切り開いていかないといけません。今も模索中ですが、だからこそ、成功したら絶対的な強みになると思います。

自分としては、データを分析するだけでなく、その領域からはみ出してやっていかなければいけないと考えています。お客様に分析結果を正しく、わかりやすく伝えるには、UI/UXも含めたダッシュボード設計が必要です。データだけ、データサイエンティストだけでは営業案件は実現できないため、必要なスキルセットのあり方も含めて考えています。

Q:つまり、データを出すだけではなく、相手が理解してアクションしてはじめて意味があるということでしょうか。

濱松:データというのは「見て」「分かって」「打ち手が理解できる」という三段階になっていると思います。つまり「ここが悪いからこうしよう」という具合に、自分たちが何をすればいいか分かるところまで表現できてはじめてデータなんだと考えています。営業にデータを見せる以上は、データの専門家ではなくてもちゃんとその意味が分かり、それを学校の先生にどう伝えればいいかまで理解できるよう設計するところまで含めて、自分たちのミッションだと考えています。

04. ただExcelを出して終わりにしない、行動できるデータを見て分かる形で提供

Q:今回のMVP受賞対象となった取り組みについて教えてください。

濱松:施策は主に2つあります。1つは、コロナ禍におけるキャパシティプランニングです。

昨年、新型コロナが流行し始めた後、3月から全国の小中高校が臨時休校となりました。先生方にとっても寝耳に水で、デジタルツールを導入していない学校では生徒に自習を強いるしかありませんでした。一方、デジタルツールを導入している学校ではそれを授業をそれに寄せようと判断し、例年以上にスタディサプリが使われることになりました。

緊急事態宣言の前後、教育向けサービスだけでなく、世の中のビジネス向けサービスやプラットフォームで利用が急増し、サーバダウンやサイト停止が発生し、ニュースにもなったかと思います。スタディサプリもものすごく影響を受けました。4月に入った途端、それまでの何倍ものアクセスが殺到しましたし、新たに導入したいという学校からの問い合わせも相次ぎました。

そこで一番避けたかったのはスタディサプリが止まってしまうことです。このまま受注し続けた場合、いつ、どのくらい利用者が増えるか、それにスタディサプリのキャパシティは耐えられるかを、データを主軸にして予想しようと考えました。

学校営業の場合、個人の利用とは違って、申込書を受け取ってから登録し、実際に活用し始めるまでに少しタイムラグがあります。つまり、多少開始を待っていただくこともできるので、キャパシティと見比べながら学校の活用計画を後ろ倒ししてもらい、調整するという取り組みを行いました。

具体的には、SRE(Site Reliability Engineering)を担当する部署からの「インフラがあとどれくらい耐えられそうか」という情報と、営業からの受注確度の情報を元に「この日には、このくらい利用者が来そうだ」と予測を立て、運用していきました。愛知県で全校にスタディサプリを導入いただくなど尋常じゃないペースで人数が増えていき、かなりギリギリの攻防となりましたが、サービスを停止することなく5月初めのピークを乗り越えることができました。

こうしてサイトを停止せずに乗り切った実績が一度できると、営業活動を展開する上での信頼につながります。これを起点にして、むしろ臨時休校が終わった後に「次の臨時休校に備えておこう」という具合に、スタディサプリへのお問い合わせがものすごく増え、三倍以上になっています。

Q:もう一つの取り組みはどのようなものですか。

濱松:今の話のもう一つの側面ですが、学校での利用が急増した結果、営業一人あたりの負荷が急増しました。営業の人数も1.5倍に増やしましたが、導入校数は3倍になっています。しかも、新人の営業にいきなり多数のクライアントを渡すわけにもいかないので、特にベテラン営業の負荷が高まりました。問い合わせが急増して電話にもすべて出れない、アポも取りきれず、新人もベテランも手一杯……という中、担当校に対する手厚いフォローができなくなっていました。

ここをデータでどう解決しようか、と考えて提案したのが「確度予測」です。現在のスタディサプリの活用状況を元に、「継続してご利用いただけるか」を出していきます。

それも「何%」といったパーセンテージではなく、「晴れ」、「曇り」、「雨」で示し、営業が「まずは雨のところから行こう」という具合に、この表示さえ見れば優先順位が決まるようにしました。ベテラン営業ならば、「このくらい活用いただいていれば継続である」といったことが肌感覚で分かるんですが、コロナ禍で対面で先生にお話を伺うのが難しい状況もあり、新人の方にはなかなか温度感がつかめません。そこをぱっと見て分かる形で提供しました。

Q:先ほどおっしゃった、UXまで含めた形での提案ですね。

濱松:そうです。分析モデル自体はけっこう複雑ですが、データ活用の現場においては、それをいかに簡単に表現できるかが求められています。考えるまでもなく、見たら行動できるようになっていることが大切です。信号機なら「赤なら止まれ」というのと同じように、この確度予測では、「雨」を見たら「ここがまずそうだから、フォローしていこう」と行動できるところまで注力しています。

このデータはBIツールのTableauでオンラインで見られるようになっています。「おかげでうまくいったよ」といったフィードバックもありましたが、それだけでなく法人営業の185名からのページビューが多くあることが大きいですね。頻繁にダッシュボードが見られている、つまり営業にデータが使われている実績があることが評価につながったのだと思います。

Q:どのような考え方でデータの見せ方を設計しているのでしょうか。

濱松:私は、「営業と先生がお互いを褒め合える環境をデータで作る」という定性的なことを行動指針にしています。まず、マッチした提案をすることで、「営業が先生から怒られない」ようにする。次に「営業が、スタディサプリの活用に関して「先生を褒めることができる」。データを使ってこの2つが成功すれば、「先生から営業が褒められる」ことにつながります。

私の所属するグループでは営業を「クライアント」、学校の先生を「カスタマー」と捉え、営業が今必要だと思っているデータを必要な時期に見られるようにしていこうとしています。シーズンごとの変動も含めて、積極的に仮説を出しながら必要なデータを提供し、ダッシュボードのページビューが伸びたら成功だと捉えています。それも一発で100点を取るのではなく、70点で一旦出してみて、少しずつ改善しながら点数を上げていく形で取り組んでいます。

Q:営業側と二人三脚ということですよね。

濱松:やっぱり営業とデータグループは、信頼関係があってなんぼだと思っています。その信頼を獲得するには、普段から「データって使えるね、データを使うことでお客さんとの関係がうまくいった」という成功体験が必要だと思います。

誰がどのくらい閲覧したか分からないExcelファイルではなく、ダッシュボードを提供し、常にページビューを追っているのにも、そういう明確な意図があります。もはや営業が必要としておらず、誰が使っているかも分からないデータを更新し続け、「データ抽出グループ」と揶揄されるのではなく、使っていないものは積極的に消し、使われるものに最大限リソースを投入することで、営業もデータを信頼し続けてくれるのだと思います。

あとはシンプルにできるか、見たデータをそのままお客さんに話せるかどうかですね。営業から「これってこういう理解で合ってますか」と聞かれたらデータは負けなんですよ。ダッシュボードが確実に見られており、しかも営業から問い合わせがない、という状態が一番の成功ですね。

05. 「データグループは仕事をしなくても会社は回る」? 真の価値はアドオンに

Q:これから先、データグループに求められる役割も変わっていくのでしょうか。

濱松:営業×データといった部分を推進していこうと思うと、どうしても既存のデータ組織の役割分担だと動きづらい部分もあるため、組織構造も変えていく必要があると考えています。

事実、データグループの構造もこれまでの壁を取っ払って変えました。データ組織の中にビジネスサイド、エンジニアサイドの役割を新たに設け、これまで誰がやるのか曖昧だったドメイン知識や営業行動の理解、施策への落とし込みといったストーリーラインの作成を私が担い、それに沿ってデータプランナーやデータサイエンティスト、データエンジニアが実装していく……という形にしました。

なんでこんなことまでやっているのかというと、まだ営業×データのやり方・役割に正解が見つかってないからです。見つけることができれば営業に対して優位な材料を提供することができますし、他社からの真似しづらさが生まれるでしょう。プロダクトやサービスならば、最初は機能や量に違いがあっても、成熟してくるにつれお互い同じような機能になってしまい、差別化が難しくなります。ただ、営業戦略やデータ活用戦略は、なかなか外部から見えない部分ではあるので、簡単にキャッチアップ・真似できるものではありません。他社が見よう見まねで真似してみようと思っても、キャッチアップにも、実装にも時間はかかります。つまり、われわれは常に先をいけることになるんです。ちょっと意地悪な戦略です(笑)が、データの一番の強みはここだと思っています。 最初にお伝えした通り、我々のクライアントは営業であり、営業の方々の働きやすい環境視点からデータストーリーを設計すると上記のような組織設計・戦略になっているということです。

ただし、これを実現するにはスキル定義が重要です。データの人間だからといってずっとデータのことだけをやるのではなく、営業やマーケティングといった領域と掛け合わせた、クロスドメインスキル拡張が重要だと考えています。

実はデータグループって、仕事をしなくても会社は回るんですよ。裏を返せば、データの価値は、データ以外の部署に対してどのくらい興味を持ち、いかに理解するかにあるんです。アクセス解析だったらUXに踏み込んで「ここのボタンをもっとこうしましょう」とか、営業やマーケティングなら「ターゲティングをこう変えれば、こんなことも分かるんじゃないか」という具合に、コラボレーションする相手と同等の知識を持つことではじめて価値を出すことができる、つまりアドオンができるんです。

どうしても営業×データ活用となると、売上貢献や生産性改善などに目がいきがちですが、あくまでもストーリーの主人公は営業だと設定して、日常的な顧客接点観点で心理的・作業的に辛い部分はどこなのかを特定し、データでどう支援できるかとういう点でデータ組織設計・戦略を突き詰めていくことで、独自の強みを作りつつ営業の先にいる学校の先生と共に「営業と先生がお互いを褒め合える環境を作る世界」を目指していきたいと思ってます。

取材時期:2021年4月

記事中で紹介した事業(名称や内容含む)や人物及び肩書については取材当時のものであり、現時点で異なる可能性がございます。

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