スタディサプリ BRAND SITE

Staff interview

#41

教材制作に新たな選択肢を。生成AIを活用した学習コンテンツ制作プロセス改革の挑戦

MVP

ChatGPT制作検証チーム

ChatGPT Production Verification Team

ChatGPT制作検証チーム
SECTION 01担当者プロフィールSECTION 02生成AIで業務を効率化し、これまで手が付けられなかったことに挑戦したいSECTION 03生成AI活用の論点を多用な観点から整理し、検証に着手するためのグランドルールを構築SECTION 04実際の業務での検証にこだわり、「成果を出す」と「失敗から学ぶ」の両軸を意識SECTION 05データや生成AIを駆使して、ユーザーそれぞれにフィットした学習コンテンツを

01. 担当者プロフィール

担当者プロフィール

- お名前:江頭 茉里 / Mari Egashira
- 組織名:コンテンツマネジメント部
- 入社時期:2020年 12月

担当者プロフィール

- お名前:七里 由香 / Yuka Shichiri
- 組織名:コンテンツマネジメント部
- 入社時期:2021年 01月

担当者プロフィール

- お名前:堀部 直人 / Naoto Horibe
- 組織名:コンテンツマネジメント部
- 入社時期:2023年 02月

2023年は、ChatGPTに代表される生成AIが大きく注目を浴びた年でした。こうした新たなテクノロジーに対し、スタディサプリの学習コンテンツ制作組織では、制作過程業務での活用可能性について検証するワーキンググループを発足。そのなかでも大きな成果を出したのが、江頭茉里さん、七里由香さん、堀部直人さんのチームです。3人はどのように検証を進め、学習コンテンツに活用していったのでしょうか。

02. 生成AIで業務を効率化し、これまで手が付けられなかったことに挑戦したい

Q:まずは、みなさんの経歴をご紹介ください。

江頭:リクルート入社以前は、教育系の出版社2社でビジネス英語の学習本やTOEIC・TOEFL対策本など、社会人向け英語学習教材の企画・編集を手掛けてきました。そこでは主に紙の書籍をつくっていたのですが、教育にもデジタル化の波がやってくる兆しを感じました。紙の本では実現できない学習効果を提供できそうな期待感もあって、スタディサプリに興味を持ちました。現在は、社会人向けのスタディサプリENGLISHで学習コンテンツ制作を担当しています。

七里:私は教科書出版社に新卒から7年間務めていました。配属されたのはデジタル部門で、小中高の国語と英語のデジタル教科書を担当。ちょうど小学校で英語が教科になる時期で、デジタルありきでの教科書制作という新しい取り組みに携わっていました。怒涛の転換期を走りきった後、別の角度からも英語教育を見てみたいと思うように。既存の枠にとらわれず新たな学びの形に向き合うスタディサプリに携わる道を選びました。今の担当は中高生向けのスタディサプリENGLISH。このコースの教材開発と制作ディレクションを行っています。

堀部:私はもともと大学院で研究をしていたのですが、自分で研究するよりも研究を伝える側になりたいと思い出版社に就職。書籍の編集を長らくやっていました。編集業務と並行して、営業データの分析も担当していたのですが、営業だけでなく書籍の編集にもデータを活かせないかと思っていたところ、スタディサプリに出会いました。ユーザーの行動ログを蓄積し、データドリブンでより良い学習コンテンツを提供しようとしている事業方針に共感し、転職。今は中学講座の数学担当として、ユーザー行動や正答率などのデータをもとに学習コンテンツの制作・改善をおこなっています。

Q:みなさんがMVPを受賞したのは、どのような取り組みなのでしょうか。

江頭:ひとことで言えば、生成AIが学習コンテンツの制作業務に活用できるかを検討し、実際の業務へと結びつけた取り組みです。2023年はChatGPTが大きな話題になり、生成AIへの期待感が非常に高まった年でしたよね。社内でも、これを使えば様々な業務のあり方を劇的に進化させられるのではないかという話があちこちから聞こえていたんです。そこで、本当にそれが可能なのかを組織として一度ちゃんと考えてみようと、生成AIによる学習コンテンツ制作検証のワーキンググループが発足されたのがはじまりでした。

普段、学習コンテンツ制作に携わっている私たちが期待していたのは、大きくふたつ。ひとつは、生成AIによってこれまで人の手で時間をかけて行うしかなかった業務を生成AIに任せて効率化すること。そして、もうひとつ期待したのが、「本当はやりたかったけれど時間やお金がかかりすぎるため手が付けられなかったもの」を、生成AIによってコストを圧縮して実現すること。なかなか手が回らず後回しになっていたことに着手できたらすごく嬉しいよねという思いで、検証がスタートしました。いくつかのテーマごとに検証を進める中で、私が全体のリーダーとなり、七里さんと堀部さんがテーマ別チームのリーダーを務めてくれました。

03. 生成AI活用の論点を多用な観点から整理し、検証に着手するためのグランドルールを構築

Q:みなさんは、生成AIに対してどんな印象を持っていたのでしょうか。

堀部:私はもともと技術的なことが好きなので、どう活用したいかというよりも純粋に生成AIという技術の可能性を探ってみたいというのが最初のモチベーションでした。また、学習コンテンツ制作プロセスのなかには、一定のロジックを組んでシステマティックに処理した方が効率が良く、正確性も担保される部分があることに気づいたことから、この部分を生成AIを使ってシステム化できないかと自分事としても期待していました。

七里:私の場合は、新たに学習コンテンツをつくるフェーズというよりは、既存学習コンテンツ改善時に発生している人力の業務を生成AIで効率化したかったんです。たとえば、既存学習コンテンツにタグをつける作業。私が担当する英語の場合は、問題文にどんな文法やキーフレーズが使われているかを把握したいというニーズがあったのですが、膨大な量の問題文から特定の文法だけを抜き出してくるのは機械的なキーワード検索では難しく、従来は人の目で全てのコンテンツを読み直してタグ付けをするしかありませんでした。その点、生成AIなら文脈や文法を理解して人に限りなく近い判断をしてくれるのではないかと考えたんです。

江頭:3人とも興味のあるテーマが少しずつ違ったんですよね。私は問題をつくることに活用したかったし、七里さんは学習コンテンツの整理や動画の字幕生成のような部分。堀部さんの場合はデータ分析の側面からも生成AI活用を考えていた。他のメンバーもそれぞれに自分のやりたいことを持っていて、多様な観点で検証しやすいチームだったと思います。

Q:具体的には何から着手したのでしょうか。

江頭:この検証の論点を整理するところから始めました。例えば、どのような業務に活用できそうか、または活用すべきかをアイデア出ししたり、逆にどんなリスクが潜んでいそうかを洗い出したり。実際に活用するとしたらどんな体制・仕組みが必要かといったテーマも含め、ざっくばらんにみんなで意見を出し、そこからポイントを整理していきました。

主な検証の論点は、「クオリティ」と「信頼性」。教材として世に出せるレベルの品質になっているか、そして生成AIで生成したコンテンツやタグがどれくらい信頼できるのかを検証のポイントに絞っていきました。また、生成AIは何らかのデータをもとにアウトプットをしているので、他社の権利侵害や、自社の機密情報流出につながらないように、権利関係は事前にクリアにしておくことが必須です。幸いにもリクルート全社で生成AIを安全に活用できる環境整備が進んでいたため、セキュリティに関しては全社方針を踏襲。それだけで万全と思わず、自分たちでも教育コンテンツに特化した権利の観点で都度慎重にチェックする行動指針を定めました。

七里:そうやってみえてきたポイントをもとに、まずは自分たちが担当している案件で試してみたんです。実はちょうど私の担当領域に、膨大な工数が必要な業務がいくつかあったので、少しでも工数削減の可能性があるならと積極的にトライしていきました。

04. 実際の業務での検証にこだわり、「成果を出す」と「失敗から学ぶ」の両軸を意識

Q:検証はどのように進んでいったのですか。

七里:最初は生成AIで業務が一気に進化するかもしれないというワクワク感が大きかったのですが、実際に試してみると上手くいかないことも多々ありました。ただ、それを私たちは失敗とは捉えてませんでした。検証の目的は、何ができて、何ができないかを明確にすること。生成AIという新しいツールを理解する意味では必要なプロセスだったと思います。生成AIは万能ではないし、成果を出したいあまり生成AIを使うことが目的化しては本末転倒。一定期間のなかで最大限有意義な検証をするためにも、活用の兆しが見えない案件については早めに撤退し、より高度な検証ができる案件に注力するという判断も必要でした。

Q:失敗から学ぶことも多かったわけですね。

江頭:未知のツールなので、いきなり成功しなくて当たり前。むしろ失敗を糧に次にどうするかを意識していましたね。例えば私が普段担当しているTOEIC対策問題を生成AIにつくらせてみたところ、一見するとそれらしい問題は大量に生成できたのですが、中身をちゃんと確認するとこのままユーザーに提供できるレベルではありませんでした。ただ、ここで失敗の烙印を押すのは簡単ですが、私たちは「早く大量につくることはできた」「クオリティに課題がある」と評価。生成AIの理解を深めた上で、改めて使い方の検討を進めました。もしかしたら、大量にアウトプットさせてその中から人の目で良いものを選び出すという使い方ができるのではないか。あるいはアウトプットの精度を上げるために、生成AIへ指示する文章(プロンプト)を磨けばいいのではと、様々なパターンの検証へと発展していきました。

堀部:一方で、目に見える成果を出すことにもこだわっていました。どんなにチームのなかで失敗も検証のうちだと目線が揃っていても、スタディサプリの価値につながるような成果を出さないと、社内での評判が下がり「やっぱり生成AIは使えない」というムードになりかねません。だからこそ、漠然と取り組むのではなく、検証の論点を明確にすることや、上手くいったこと・いかなかったことを細かく切り分けて整理していくことを重視していました。

また、自分たちの手元にあった業務以外にも、活用の可能性を探っていました。ちょっとしたアイデアを事業に起案できるリクルートの社内制度「Ring Dash」で、生成AIを活用したプロダクトの改善を提案したのもそのひとつ。そして、生成AIで解決できそうな課題を抱えているプロジェクトとして小学講座にたどり着きました。演習問題の追加が検討されていた小学講座のチームに対して、生成AIの活用を提案し、短納期・低単価で問題制作を遂行できました。小学講座のスピーディな効果改善施策の一つとなり、生成AIによる学習コンテンツ制作の可能性をポジティブに広めることができました。

05. データや生成AIを駆使して、ユーザーそれぞれにフィットした学習コンテンツを

Q:取り組みを経て、どんな成果や兆しが見えていますか。

江頭:一番の成果は、私たちの所属するコンテンツマネジメント部内で生成AI活用に関する目線合わせができたこと。注目度の高いテクノロジーだからこそ、漠然と期待や不安を感じている人も多かったですし、生成AIに対する認識や期待値も人それぞれでしたが、基本的な使い方や活用上のルールなどのガイドラインを示すことができました。検証の論点だったクオリティと信頼性を担保する意味で定義したことは、“必ず人の目を通すこと”です。生成AIに全てを任せるというスタンスで利用するのは、現時点ではリスクが高いと判断。生成AIが業務を行うとしてもどこかで人による確認プロセスを必ず挟むことで、事業も従業員も安心して活用できる状態を整備しています。

Q:みなさん自身にはどんな学びや気づきがありましたか。

堀部:生成AIの価値を探求することは、回りまわって「人の価値とは何か」という問いだったのだと気づかされました。コンテンツディレクターが、人にしか発揮できないクリエイティビティを発揮するにはどうしたらよいか。生成AIにできること・できないことを検討するだけでなく、自分たちにしかないケイパビリティとはどのようなもので、どんな場面で発揮すべきかなのかを見つめ直す機会にもなったと思います。

Q:学習コンテンツ制作における生成AI活用は今後どのように発展していきそうでしょうか。

堀部:一旦ルールや手法は整理したものの、生成AIは進化のスピードが非常に早い分野。去年は無理だったことが今年は簡単にできてしまうことも起こりえるので、引き続き検討を続けていきたいです。例えば、画像や音声の生成。スタディサプリは動画コンテンツを軸としているので、上手く活用すればこれまでにない学習コンテンツを学習者に届けることもできるはず。実用にはまだまだ課題があるのが実情なのですが、検証を続けて学習コンテンツ制作のあり方を進化させ、より良い学習体験を届けたいです。

Q:最後に、それぞれが仕事を通して実現したいことを教えてください。

七里:私がこれまで語学学習に携わってきたのは、日本の英語教育の現状を変えたいという思いからです。本来英語は世界中の人と交流できるコミュニケーションツールなのに、多くの日本人が学校で良い成績を取るためや受験のために学んでいる、そしてそれが苦手意識をより一層持たせてしまうのだと思います。だからこそ、英語の学習体験自体を進化させ、楽しく、自分の世界を広げるものとしてポジティブに捉えてもらえるようにしたいです。

堀部:私が前職で担当してきたビジネス書というジャンルは、広い意味で学習教材のひとつですが、「購入したが読んでいない」という人も多かった。そんな風に大人、子ども関係なく、学び続けることは非常に難しいものです。でもそれは、全員一律の方法で学んでいるからなのかもしれません。スタディサプリでデータや生成AIの活用がもっと進めば、一人ひとりの理解度や習熟度にあわせて個々に最適な学習体験を提供できるかもしれない。そうやって人々が学ぶことの楽しさに気づき、学びを加速させることが目標です。

江頭:前職で紙の書籍を制作していた時代は、読者の反応が見えづらかったことにもどかしさも感じていました。その点、スタディサプリではユーザーの行動ログを蓄積しているので、自分が手掛けた学習コンテンツへの反応が分かるのがいいところだと感じています。そんな環境で追求していきたいのは、ユーザーにとっての楽しさと学びのバランス。楽しさを優先しすぎると学習コンテンツとしての品質を下げかねないし、かといって最初から難解な問題を提示しても取っつきにくい。生成AIのような新しいテクノロジーを上手く活用しながら楽しさと学びの最適なバランスを取って、より良い学習コンテンツを届けていくことが私の目標です。

記事中で紹介した事業(名称や内容含む)や人物及び肩書については取材当時のものであり、現時点で異なる可能性がございます。

スタッフインタビューの記事

部長

笹部 和幸 - Staff interview #02

世にも奇妙な英語学習マーケット

室長

池田 脩太郎 - Staff interview #03

最強の講師陣との運命的な出会い。つないだのは“サプリの理念”

エンジニア

深尾 元伸 - Staff interview #05

飲食業から一転、Quipperで長年の夢を叶えたエンジニア

最新の記事

MVP

SLO計測基盤リニューアル チーム - Staff interview #45

三人それぞれの強みを活かし、サンクコスト効果に負けず適切な解決策を実現

MVP

田中 京介 - Staff interview #44

「これは本当にあるべき姿?」と疑う姿勢を持ち、ゼロベースからの施策検討でコストを最適化

MVP

岡﨑 翔平 - Staff interview #42

小1講座リニューアルの裏側。低学年ならではのユーザーインサイトを捉え、「楽しく学び続ける」ための初期体験を磨き込む