Staff interview
#49

01. 担当者プロフィール

担当者プロフィール
- お名前:森本 くるみ / Kurumi Morimoto
- 組織名:教育支援小中高プロダクト開発部
- 入社時期:2021年 04月
『スタディサプリ小学講座』では、子どものやる気を高め、学習を継続させたいというニーズにいかに応えるかが課題となっていました。小中Android開発グループの森本くるみさんは、ユーザーインタビューでの声を元に、お絵描きツールを使って保護者とコミュニ ケーションを取れる「きょうもできた!」機能のアイデアを思いつき、企画の立案から実装、効果分析までを行い、実際に定量的にも定性的にも大きな成果を実現しています。そのポイントを伺いました。

02. 社内でも特に技術力の高い環境に魅力を感じ、まなび領域に異動
Q:エンジニアという職業を選んだのはなぜですか。
森本:高校2年生の頃にプログラミング体験に参加し、Androidアプリケーション(以下アプリ)を開発したことが一番最初のきっかけです。それ以前は、世の中にあるアプリを誰かが作っている、ということすら意識したことがありませんでした。けれど、プログラムを書くことの積み重ねで、日頃自分が使っているアプリが作られていることを知り、この新しい世界に興味を持ちました。
加えて、自分が作ったアプリを友達や家族が触ってくれて「面白いね」と言ってくれたことがとてもうれしかったというのが原点にあります。
大学では情報工学を専攻し、コンピューターサイエンスやアプリ以外の技術領域にも幅広く触れてきました。しかし最終的に 「自分の書いたプログラムで誰かに喜んでもらいたい」という原点に立ち返り、アプリケーションエンジニアの道を選択し、リクルートに入社しました。
Q:いくつかの部署を経て、まなび領域に来た 理由は何ですか。
森本:部署側の都合による異動もありましたが、まなび領域に来たのは自分の意思です。テストや受験のためというよりも、自分の将来の可能性を広げるための学びの機会を提供したい、という思いがありました。また『スタディサプリ』は、新しい技術スタックを採用し、技術力の高いエンジニアが集まって開発をしているイメージがあり、そういう場でチャレンジしたいと希望し、異動してきました。
Q:実際、今のチームでは手応えが得られていますか。
森本:Androidに関する最新の技術に触れながら、ブログで関連する技術記事を書いたり、DroidKaigiのような大規模カンファレンスで登壇する機会を持ったりすることができています。また、直近では RECRUIT TECH CONFERENCE 2025 というイベントでもLT(5~10分程度の短いプレゼンテーション)を行いました。アウトプットに対して反響やリアクションをいただくことも多く、手応えを感じています。

03. ユーザーの声を出発点に機能の「軸」を定義し、スピーディーなリリースと大きな成果を実現
Q:「きょうもできた!」機能を企画した経緯はどのようなものでしたか。
森本:『スタディサプリ』では定期的に利用者や解約者向けのインタビューを実施していま す。それをエンジニア含めさまざまな職種の人が誰でも手軽に見学することができます。ユーザーインタビューは保護者や学習者のリアルな声を直接聞ける大切な機会なので、作業の合間を縫って積極的に参加するようにしています。
その中で、お絵描きやお手紙といった機能に対する要望やトレンドをキャッチしました。インタビューを受けていた方が、嬉しそうに実体験を我々に共有してくださったことが非常に印象的で、「スタディサプリのアプリでもこんな風に喜んでもらえる機能を作れたらいいな」と純粋に思いました。同時にエンジニアとして、手書き機能の技術的な実現性も高く、直感的に「できそうだな」と感じたことが発端でした。
Q:そのアイデアをどう実現にこぎつけていったのでしょうか。
森本:「こういうものを作ったらいいんじゃないか」と口頭で議論するよりも、まず動くものを示した上で「こういうことができるから、ブラッシュアップして出していこう」という方向で動く方が早くリリースできるのではないかと考えました。ですので、まず簡単に動くプロトタイプを作った上で、社内に「一緒にブラッシュアップしたり、デザインを考えたりしてもらえませんか」と呼び掛けて開発を進めていきました。
Q:このやり方で、スピーディに開発を進めることができましたか。
森本:はい。プロトタイプ自体はユーザーインタビューから1週間程度で作成することができました。その後、2024年4月末から、開発の承認をもらうために「なぜやるのか」「どういった要件で開発するのか」といった案件の検討に取り組みました。案件の検討、技術検証、実際の開発にそれぞれ1ヶ月ずつ費やしましたが、全体としては半年もかからず、2024年8月半ばにはリリースを実現できています。案件の検討に時間をかけて細かく話を詰めたからこそ、開発自体はコンパクトに終わったと思っています。
Q:苦労したことはありましたか。
森本:「MVP(Minimum Viable Product)は何か」という言い方をしていますが、最低限実現するべき要件の「決め」が大変でした。プロダクトマネジャーをはじめ周囲の方々と壁打ちし、言語化を手伝ってもらいながら、どんなユーザーストーリーを描いて、そのためにはどんな体験ができなくてはならないのかを固めていきました。
たとえば「ここにこういうボタンがある」という仕様レベルの話ではなく、「何が実現できれば、きょうもできた!という機能としてやりたいことが満たせているのか」という本質的なところを突き詰めていきました。最終的に、「一日の学習の締めくくりに子どもと保護者が一緒にお絵描き機能を利用することで、保護者から子どもへの褒めのコミュニケーションが促進され、子どもが明日も勉強しよう!と感じるようになる」というユーザーストーリーを描きました。そして、このストーリーに沿って「一日の学習のサマリが視覚的に表現されている」「子どもが自発的に使いたくなる機能である」「保護者が手軽なアクションで褒められる」という3点をMVPとして定義しました。
Q:最初にその指針をしっかり固めたことで、どんなメリットがありましたか。
森本:軸を立てた ことで、何をどこまで作り込む必要があり、逆にどこは作らなくてもいいのかの判断がぶれず、迅速にリリースできたと思っています。
たとえば、デザイナーから「ここのデザインをもう少しリッチにした方がいいんじゃないか」とか、エンジニアから「ここは厳しいから削ってもいいんじゃないか」といった話が出てきたときでも、この方針に基づいて「これはやりすぎだから(MVPの定義を超えているから)やらなくてもいい」「ここは大変かもしれないけれど、必須だからやってほしい」とぶれずに判断を下し、提案に対して納得感のある回答ができたと思います。

Q:こういう形で機能の企画から開発まで進めたのは、ご自身にとって初めての経験でしたか。
森本:そうですね。小さな改善に関する提案は日々ありますが、新たな機能を0から作ることは初めてで、自分にとって大きな挑戦でした。ですが、提案をポジティブに受け止め、歓迎するチームとしての文化があったことに加え、「学習を継続してほしい」という事業の方向性にやりたいことがマッチしていたことも、プラスに働いたと思います。
Q:周囲の方々を巻き込むために、どんな工夫をしましたか。
森本:最初に動くものを作って見せることもそうですが、皆さんになるべくワクワクしてもらえるように、進捗状況をオープンに発信していました。意思決定自体は少人数の関係者でスパッと決めつつ、「今、お絵描き機能がここまで動いていますよ」「デザイナーさんにこんな素敵なUIを作ってもらいました」といった情報を週次の定例会議やSlackを通して全体に共有することで、チームとして期待を高め、ワクワク感を持ちながら進められるように意識しました。
Q:それは逆に、進捗面でのプレッシャーになりませんでしたか。
森本:確かにお絵描きアプリという特殊な機能でしたが、チームが備える高い技術力で乗り越えることができたと思います。実装が困難な部分は、MVPに影響を及ぼさないものであれば削っていき、お盆休みの前に出そうというスケジュールに沿って進めていきました。
Q:実際に機能をリリースしてからどんなフィードバックがありましたか。
森本:定量的な分析の結果、機能を一度でも利用したことのあるユーザーの割合が50%を超えていること、機能を利用しているユーザーの方が継続学習の傾向があることが確認できました。
また定性的にも、解約者アンケートの結果から、小学講座の解約理由の一位になっていた「子どものやる気を高める機能や仕組みに満足できなかった」という回答が大幅に減少し、手応えを得られています。
他にも、個人的にとてもうれしかったのが、もらえるとは思っていなかった「反響」があったことです。カスタマー問い合わせ窓口やユーザーインタビュー、インターネット上のブログなどで、機能を楽しく使っていると、直接お声をいただくことができました。

04. 「適切なプロセスを踏めば、成果がついてくる」という経験を糧に、業務の幅を広げる
Q:ここまでうまくいった要因はどの辺にあると思いますか。
森本:企画のきっかけとなった、ユーザーインタビューで伺った実体験と同じような体験を実際に『スタディサプリ』でも提供することができたと感じています。これは、私たちの推測ではなく、ユーザーの声からスタートしたことが一番大きい要因ではないかなと思います。
一般論として、ある機能を前提にしてユーザーインタビューで「こんな機能があれば使いたいですか?」と尋ねても、たいてい「使いたい」と答えますよね。でもこれって、アンケートのアンチパターンと言われているとおりで、回答を鵜呑みにして実装しても結局使われなかったという事例はよくあると思います。
今回は、こちらから恣意的に取りに行った情報ではなく、本当のユーザーの声を拾ったことがスタートでした。しかも、その声をただ鵜呑みにするのではなく、自分たちで噛み砕いてポイントを要素分解し、それを満たすものを作っていったのが大きな要因かなと思います。ユーザーの声を出発点にしつつ、自分たちで本質を考え抜くことをチームとして遂行していくという、適切なプロセスを踏むことのできた案件であり、それが結果にもつながったのかなと思っています。
Q:会社の環境や文化もポジティブに働 いたのでしょうか。
森本:RECRUIT TECH CONFERENCE 2025でもお話ししたのですが、『スタディサプリ』の開発組織の文化や技術力、開発プロセスは、非常にレベルが高く、素敵なものだと思っています。今回の機能も、今のチームだったから実現できた企画だと思っています。

Q:今回の成果を踏まえて、次はどんなことにチャレンジしたいと考えていますか。
森本:今回の案件を通して、「適切なプロセスを踏めば、成果がついてくる」と実感することができました。それも個人だけではなく、チームとして学びを得ることができたのは大きな収穫で、職種を問わず積極的にユーザーインタビューに参加したり、改善や新機能の提案していこうというきっかけになったと思っています。
私自身でいうと、今期からはプロダクトマネジャーを兼務しており、業務の幅を広げています。プロダクトマネジャーとして、課題の言語化とプロセスを最後までやり切る力を磨きつつ、これまで培った技術的バックグラウンドを武器にプロダクトをエンハンスさせていきたいです。それが、プロダクトマネジャーとしてもエンジニアとしてもステップアップに繋がると考えています。
記事中で紹介した事業(名称や内容含む)や人物及び肩書については取材当時のものであり、現時点で異なる可能性がございます。