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Staff interview

#55

路線を変更しながらもスケジュール内にCDN移行を完遂し、コストを大幅に最適化

MVP

動画CDN移管チーム

Video CDN Migration Team

動画CDN移管チーム
SECTION 01担当者プロフィールSECTION 02『スタディサプリ』の中でも重要な役割を果たし、専門性が求められる動画配信SECTION 03より良い結果を求め、一度決めていた移行先候補から方針変換SECTION 04チーム間の壁の低さが功を奏した移行成功、今後に役立つ新たな知見も

01. 担当者プロフィール

担当者プロフィール

- お名前:古城 大 / Masaru Kojo
- 組織名:高校開発2G
- 入社時期:2019年 01月

担当者プロフィール

- お名前:熊木 京平 / Kyohei Kumaki
- 組織名:高校開発2G
- 入社時期:2023年 06月

担当者プロフィール

- お名前:田中 京介 / Kyosuke Tanaka
- 組織名:まなび戦略SREG
- 入社時期:2021年 04月

『スタディサプリ』がユーザーに提供するコンテンツの中で、動画は非常に重要な役割を果たしています。テキストや画像に比べ非常に容量の大きい動画コンテンツをスムースに、またセキュリティを保ちながら配信するには、CDN(Contents Delivery Network)という外部のプラットフォームの活用が欠かせませんが、事業の成長フェーズに合わせて、インフラコストを常に最適化し続けることが重要だと考えています。そこで動画CDN移管チームでは、余裕があるとは言えないスケジュールの中でより良い選択肢を模索し、いったんは決まりかけた路線を変更して約84%のコスト削減という大きな成果を挙げました。粘り強い交渉とスピーディな技術検証の裏側にあった思いを、チームの皆さんに伺いました。

02. 『スタディサプリ』の中でも重要な役割を果たし、専門性が求められる動画配信

Q:皆さんの経歴を教えてください。

古城:私は2019年にリクルートに入社し、最初はWebエンジニアとして働いていました。その後、前任の後を継いでグループマネージャーとしてチームを率い、議論のファシリテーションや外部とのコミュニケーションといった役割を担っています。今回MVPを受賞したCDN移管のプロジェクトには、実は途中から加わった形です。

熊木:今回のCDN移管は、田中さんが所属するSREグループと、動画基盤チームという2つのチームが協力して進めました。私はこのうち、古城さんが率いている動画基盤チームのメンバーの一人です。
自分は「もの作りをしたい」という希望があり、別の企業でハードウェアの設計・開発に携わっていました。しかし社内調整に追われることが多く、「ちょっと違うな」と感じてソフトウェア開発者に転じることにし、キャリアを重ねる中でリクルートに転職しました。大学時代に個別指導塾で講師として働いた経験があり、ずっと興味のあった教育という事業と結び付いている感覚があり、手応えを感じています。

古城:『スタディサプリ』のユーザーで最も多いのは、人生のターニングポイントの一つにいる高校生たちです。そこに関わることができ、しかも実際に使ってもらっている生徒さんや学校の生の声を聴く機会があり、やりがいと楽しさを感じますね。

熊木:塾だと自分が見れるのはせいぜい10人程度ですが、『スタディサプリ』というプロダクトであれば、それこそ何十万人という学生にいい影響を与えることができます。この規模の大きさも非常に魅力的だと思っています。

Q:一方、田中さんは連続でのMVP受賞ですね。

田中:そうですね。自分は新卒で入社して5年目になります。『スタディサプリ』でSREとして4年近く仕事をしてきましたが、「より大きな課題を解決できそうな、よりプロダクトに近いところで仕事をしたい」という希望を持っており、徐々にバックエンド寄りの業務に移ってきました。
今回のCDN移管プロジェクトには、動画基盤チームが進めてきた話に、SREとして、いかに事業に影響を与えずにコストを最適化していくかという観点から、外から割り込むような形で入ることになりました。結果として、よりプロダクトの機能に具体的に関われるような立ち回りができたと思っています。

Q:SREグループと動画基盤チームの業務は重なり合う部分が多いのでしょうか?

田中:いえ。『スタディサプリ』には先生向け、生徒向けなど個別のアプリを開発しているチームの他に、今回の動画のように、プロダクトとしての共通機能を開発する専門的なチームがあります。そして、それらを横軸として支えるチームとしてSREがある、というイメージです。

古城:そもそも動画チームができたのは2024年のことです。専門性が高く、『スタディサプリ』にとっても重要なドメインであるという判断から、独立したチームとして設立されました。

Q:動画配信というのは、専門のチームを作るほど特殊な知識が求められる技術なのでしょうか。

熊木:まずコンテンツの容量が非常に大きいため、CDNの活用をはじめ、一般的なWebサイトを作るときに用いる技術とは異なる、専門的な技術が求められますね。

田中:その上で、字幕を付けたり、著作権を踏まえてアクセス権限を管理する仕組みを追加する必要があります。また、通常のWebコンテンツならば一度処理をしてデータベースを参照すれば済みますが、動画の場合はストリーミングとしてずっと流し続けなければいけません。他にも多様なデバイスに対応したり、回線に応じて画質を変えて最適化したりと、見えないところで工夫が求められる部分がたくさんありますよね。

古城:シンプルに動画を配信して閲覧できるようにするだけならば話は単純ですが、快適に見れるようにすると、動画配信ならではのさまざまな工夫が必要になります。

03. より良い結果を求め、一度決めていた移行先候補から方針変換

Q:そんな動画配信に必要なCDNですが、なぜ移管することになったのでしょうか。

熊木:『スタディサプリ』ではそれまで、別のCDNを利用していました。昔の話なので詳しい経緯はわかりませんが、当時のシステム要件や規模において、最もバランスの良い選択肢だったと聞いています。数年経ち、事業全体としてコスト意識が高まる中、他社に移行すれば大きく費用を削減できる余地があることに気付いて真剣に移行を検討し始め、2025年2月ごろから、ある会社のCDNサービスへの移行作業を開始しました。

田中:当時と今とでは流す動画のボリュームが異なりますし、CDNサービスのメニューも異なります。当時としては決して高いサービスを選んだわけではありませんが、状況に合わせて見直すのは十分合理的なことだと思います。

Q:当初は、最終的に採用したAmazon CloudFrontではない別のCDNサービスを検討していたのですね。

熊木:そうです。第一候補のサービスに合わせ、移行に向けた実装もかなりの程度進めていましたが、そこにAWSから非常に魅力的な提案を頂きました。田中さんから、社内でCDN移管を考えているという情報をそれとなく共有していただいたんだと思います。

田中:『スタディサプリ』のインフラは、動画以外はほとんどAWS上に構築されており、AWSのチームとの打ち合わせも定期的に行っています。その中で「そういえば、最近、社内でこんなことを考えてるんですよ」とお話ししたところ、「AWSは検討されましたか?」というご指摘を頂きまして(笑)、それは確かにと思い、急ピッチでPoCやコストの試算を開始することになりました。

熊木:ただ、提案を頂いたのはCDN移行プロジェクトも後半になってからのことでした。別サービスへの移行準備がある程度進んでいたこともあり、後ろ向きな気持ちがなかったわけではありません。しかし、移行工数を考慮してもそれを大幅に上回る投資対効果が見込めるほど価格的には非常にインパクトのある提案をいただけたことと、田中さんが「高い効果が期待できるから、ぜひやりましょう」とコミットメントしてくれたことで、決定に踏み切りました。

古城:サポート面でも安心できそうだという手応えが得られたのも要因の一つですね。

Q:配信基盤の切り替えは、インスタンスの切り替えのように簡単にはいかないものなのでしょうか。

田中:まず、正規のユーザーだけに動画を見せるためのアクセス制御の部分でどのようにトークンを検証するか、といった制御を実装する必要がありました。
また、CDNのエッジコンピューティングでは、コードの量や一回の処理に要する時間にさまざまな制約があります。各処理に何秒時間がかかるかわからなければ、正確なコストが見積もれず、移行の可否も判断できません。

熊木:CDNは設計が少し変わるだけで、コストも、リクエストを投げてからのレイテンシも変わってきますから、基盤の乗り換えには不安がありました。実際、うまくキャッシュができないといった課題もありました。

Q:課題解決に向けて、どのような手を打っていきましたか。

古城:まず、半ばまで進めていた実装をそのままAmazon CloudFrontに持っていけるのか、性能はもちろん、アクセス制御などの非機能要件も満たせるのかの検証からやり直さなければなりませんでした。
コードの行数が多くはなかったとは言え不確実性だらけでしたが、さらに大きな削減効果が見込めるという田中さんの後押しを得ながら一週間程度でPoCを行い、問題点を一つ一つクリアにしていきました。今週中に検証して来週決める、といったものすごいスピード感で決めていった覚えがあります。
事前に契約内容を確認はしていたのですが精査が甘く、7月末までに切り替えを完了させる必要があることが、ギリギリになって判明しました。こうした部分を、知見を持つ部署に相談してしっかり確認しておけば、もう少し余裕が持てたかもしれません。

田中:できるかどうかは手を動かしてみなければわからない、けれど、手を動かす時間もなかったため、限られた時間の中でとにかく動くものを作り、実現可能性を確認してきました。AWS側にも連日のように仕様を尋ねながら進めていきました。

Q:厳しいスケジュールを乗り切れたポイントは何だと思いますか。

古城:田中さんをはじめ、動画基盤チーム以外のさまざまな皆さんからたくさんの協力をいただけたことが大きかったと思います。SREチームの方々には、田中さんをしばらくフルにプロジェクトに参加してもらうことについて快く了解をいただけましたし、動作確認を行うQAチームでも、急きょ人をアサインしてもらい、急ぎで対応して頂きました。他にも、動画チームや契約回りをチェックする法務、購買チームなど、多くの方々にこのプロジェクトの重要性を理解していただき、手助けしてもらいました。

Q:実際の移行はスムーズでしたか。

熊木:自社開発の darklaunch というフィーチャートグル基盤を活用し、リクエスト単位で新旧基盤を少しずつ切り替えることで、動画の配信に影響がないことを確認しながら無事進めることができました。

古城:動画配信の技術に求められる高い専門性を身に付けるため、熊木さんの主催で動画配信技術に関する勉強会を実施してきました。実は、そこで学んだことの一つが、今回の移行後の設計と同じものでした。日々の勉強の成果を生かして、「あ、これ、この前の勉強会でやったやつだからいけそうだ」という共通認識を持てたことも、短い期間で判断を下せた理由の一つだと思います。

04. チーム間の壁の低さが功を奏した移行成功、今後に役立つ新たな知見も

Q:結果としてかなりのコスト削減が実現できましたね。

田中:最終的に、年間でCDN費用を約84%削減できました。当初案に比べても、より大きく上回る削減を実現しました。

熊木:CDNは幅広い技術の集合ですが、このプロジェクトは各社のサービスの特徴を知るいい機会になりましたし、知見も増えました。今後、CDN上で何らかの機能を追加したいという場合にも活きてくると思います。また、社内で完結するのではなく、他社と交渉しながら条件の折り合いを付けていくノウハウも身に付いたと思います。この知見を他のチームに広げることで、サービス全体でコストを適正化できていくとも思います。
もちろん、チームとしての対応力も高まりました。これには、古城さんがチーム内の合意形成を促進してくれたこと、そして元々持っていた技術力や、関係者をすぐ巻き込めるような組織体制が有効に働いたと思います。

田中:自分はなんとなく移行の動きをキャッチアップし、関心は持ちながらも「別チームが進めていることだしな……」という気持ちがあったのも事実です。ただ、今回の取り組みで得られる効果が非常に大きいことがわかったので、「あれこれ言っても許してもらえるだろうな」と考えてだいぶ口を挟んでしまいました(笑)

古城:でも、今回は田中さんの貢献が一番大きかったと思います。値下げの提案を引き出して頂いた事に始まり、短期間で技術検証も行っていただき、「マジありがとう」っていう感じです。

田中:僕こそ、動画チームの皆さんにすごくお世話になりました。今回は、プロジェクトの途中から割り込んでいった形ですが、「いや、もう話は決まっていますから」と耳を貸さないのではなく、「より良くなるのだったら一緒にやりましょう」とポジティブに言っていただけたのは非常にうれしいことでしたし、そうした壁の低さが『スタディサプリ』のプロダクト組織の非常に良いところだと思います。また、元々の知見や技術力といった地力を生かして、いきなり提案された新たなサービスにキャッチアップしていったところはすごいなと思っています。
『スタディサプリ』には、作るのは他人に任せて自分たちは運用だけ、逆に、自分たちで作るけれども運用は他人に任せる、といったことはせず、オーナーシップを持つ文化があります。今回も、さまざまな部署が関わり、協業しながらより良い方法を模索していく中で、しっかりとオーナーシップが根付いたように思います。

Q:では、今後のそれぞれの展望を伺えますか。

古城:今後、動画基盤チームはコンテンツ開発グループの中に発展的に統合されていく予定です。動画は重要な要素ですが、それを『スタディサプリ』のコンテンツの中の一部としてうまく統合し、最適な入稿体験を提供したり、よりよいコンテンツとして洗練させていく観点が必要だと判断し、チームを再編しつつあります。

熊木:字幕も含め、よりよいコンテンツをどう実現していくかという観点は持ち続けていかなければならないと考えています。この先、進化していくAIを活用して、たとえば「二次関数のこの公式を説明してほしい」と生徒さんが尋ねたときに、「この講座とこの動画が参考になりますよ」と答えて学びを支援するといった具合に、動画を単なる配信対象としてではなく、一つの「学習コンテンツ」として他のデータと統合して扱うことでプロダクトの価値をより高めていけるのかなと思っています。

田中:自分は5月から、リクルートの中でもHR系の事業であるIndeedに異動し、アメリカで働くことになります。今回の取り組みは、『スタディサプリ』在籍中に最後に挙げた成果の一つになったと思っています。
僕は元々、いろいろな事業でユーザーに向き合いたいという思いを抱いてリクルートに入社しましたが、その一つの軸として、『スタディサプリ』という形で教育事業に携わり、ユーザーと近い距離で向かい合えたのは得がたい経験でした。ここで得たものは、他の事業でも、他の国でも絶対に生きてくると思っています。また、同じリクルートということで、互いのナレッジを持ち寄って、高め合えていければと思います。
僕が尊敬するエンジニアの方が残した「一行のログの向こうには、一人のユーザーがいる」という言葉があります。エラー率が0.1%ならば十分だと思いがちですが、そのエラーログの裏には何かに困っているユーザーが確実に存在します。その事実に一つ一つ向き合い、本質的な課題に取り組むことはとても大事なことであり、どこに行っても忘れずにいたいと考えています。

記事中で紹介した事業(名称や内容含む)や人物及び肩書については取材当時のものであり、現時点で異なる可能性がございます。

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