Staff interview
#53

01. 担当者プロフィール

担当者プロフィール
- お名前:七里 由香 / Yuka Shichiri
- 組織名:社会人コンテンツG
- 入社時期:2021年 01月
近年、言語学習のマーケットではAIを相手にした会話学習サービスが登場。これまでのサービスの常識が一変しようとしています。こうした社会の変化を受け、『スタディサプリ』でもAIによる英会話学習機能を搭載。大がかりな機能追加を圧倒的スピードで実現し、複数のコースにまたがって展開させているのが、社会人コンテンツGの七里由香さんです。七里さんは、社内にナレッジがないAI英会話サービスをどのように実現させたのでしょうか。これまでの挑戦の道のりを聞きました。

02. 日本の英語学習、積年の課題「話せない」。AI英会話に解決の糸口を見出して
Q:まずは七里さんのこれまでのキャリアを教えてください。リクルートに入社するまでは何をしてきたのですか。
七里: 私が社会人になったのはちょうど学校での英語教科化が検討され始めたタイミング。そこに携わりたいと思って教科書出版社に新卒で入社し、7年ほど勤務しました。担当したのは小中高の国語と英語です。一般的に教科書と言えば紙の教科書を想像する人が多いと思うのですが、私が所属していたのは出版社の中のデジタル部門。当時は紙の教科書をデジタル化していく時代の流れもあって、まだまだ前例が少なく各社が試行錯誤をしているような過渡期を経験しました。
Q:もともと教科書が専門なのですね。そんな七里さんがなぜリクルートへ転職したのでしょうか。
七里: 教育に携わりたいという気持ちは変わらなかったのですが、教科書という検定や指導要領など一定制約のある枠組みの中だけではなく、より自由により新しい教育の形を追求できる環境を求めたのが一番の理由ですね。そこで目に留まったのが、当時アダプティブ学習や反転学習で教育業界の黒船と呼ばれていた、リクルートの『スタディサプリ』だったんです。
Q:入社してからのお仕事についても教えてください。
七里: 主に担ってきた役割は教材コンテンツの開発ディレクションなのですが、担当してきたプロダクトが複数あります。ひとつは学校様向けの『スタディサプリENGLISH』における英語教材。そしてもうひとつが社会人向けの『スタディサプリENGLISH』です。現在はコンテンツ組織のマネジャーとして『スタディサプリENGLISH』の全コースを横断で管轄しており、学校様向けの『スタディサプリENGLISH』のプロマネ・プロデザも兼務して担当しています。
Q:七里さんのキャリアは「英語教育」や「教育現場でのデジタル活用」というキーワードで一貫していますよね。なぜこの分野に興味をもったのですか。
七里: 私は大学時代に日本語教育を専攻しており、オーストラリアで1年間、現地の中高生に日本語を教える経験をしたのがきっかけです。必然的に現地の教育方法に触れて、刺激を受けました。ひとつはICTの活用が日本よりも進んでいたこと。そして、言語学習に関してはコミュニケーションが重視されていたこと。つまり、正しい単語や文法を覚えるよりも話すこと、アウトプットに重きが置かれていたんです。子どもたちは「話した、伝わった、嬉しい!」という成功体験を積むことによって学習が加速している様子。日本の英語教育もこうなれば良いのにと思った一方で、知識の習得を重視にする日本型の教育にも良いところはあると気づいた。だからこそ、両方の視点を持って日本の英語教育に携わってみたい、教育の根幹となる教科書や教材をつくってみたいと考えたのが、私の原点です。
Q:では、今回取り組んだ「AI英会話」は七里さんがやりたかったことそのものだと言えますね。
七里: まさに私の一番の動機はそこにありました。というのも、AI英会話機能に取り組む理由は他にもいろいろあったんです。例えばAI英会話の類似サービスが市場で急成長していたこと、社内でもAI英会話機能があったら良いよねという声がよく聞こえていたこと、既存コースの学習体験に一部改善したい点があり、解決策としてAI英会話がフィットしそうなこと……と、あらゆる観点でAI英会話の気運は高まっていました。でも、心の底から自分がワクワクしたのはAIと会話するという学習体験が日本の英語学習者にフィットしているという確信があったからです。AIが相手なら間違いを恐れず、恥ずかしがらずに話しやすいはず。これは絶対に届けたい価値だと思って取り組みを始めました。

03. 要件を絞って最速リリースを目指しつつ、中長期の展開を見据えた汎用性を意識
Q:AI英会話を実現させる道のりで、七里さんが特にこだわったのは何ですか。
七里: 「最小のコストで、最大の効果を出す」ことです。ビジネスとして当たり前の発想ではあるものの、AI英会話に関して言えばマーケットで類似サービスが急速に広まっている時期でもあり、最速のリリースを目指す意味でも小回りの利くサイズ感で開発を進めたかったんです。
Q:スピード感のあるリリースを実現するために、具体的には何をしたのですか。
七里: 私が意識したのは、初期リリース時の機能をMVP(Minimum Viable Product=顧客に価値を提供できる実用最低限の機能を備えたプロダクト)に絞り込むことです。最終的に提供したい機能はたくさんあったのですが、最初からそこを目指すとどうしても開発コストが膨れ上がりますし、規模が大きくなれば意思決定に時間もかかります。だからこそ、何を諦められるか、最低限必要なものは何かという観点を徹底的に考え抜きました。
また、プロジェクト発足から初動の動きを最速にすべく、体制が完全に整うまでは、PMM/PdM/コンテンツの3役を兼務しつつ進行。複数ロールを担うことで、MVPの絞り込みや関係各所との合意形成もスムーズに進められました。さらには、開発と効果検証をクイックに行うためにプロトタイプはあえてiOS版のみでのリリースとするなど、小さな単位でよりスピード感を持って進行するよう意識しました。
Q:一方で、「最大の効果を出す」ためには何をしたのですか。
七里: 『スタディサプリENGLISH』は、ビジネス英語や新日常英会話など複数のコースを提供しており、通常はコースごとに機能やコンテンツの検討を行っているのですが、今回は一度の開発で、複数のコースに展開可能な状態を目指しました。AI英会話の検討は、法人向けの『ビジネス英語コース』ではじまったものの、他の領域にも確実にニーズがあると睨んでいたからです。MVPに絞り込むという意味では、ビジネス英会話向けに最適化するという選択肢もあったのですが、その場合は他コースに応用する際に別途開発が必要になってしまいます。ならば、汎用性や拡張性を意識して設計した方が、結果的に他コースでの機能追加もしやすくなるはずだと考えたんです。

04. インプットとアウトプットをバランスよく実施できる、理想の学習体験に一歩近づけた
Q:取り組みによってどんな成果が創出できましたか。
七里: 2025年の5月ごろに開発をはじめ、半年後の11月には『ビジネス英語コース』でβ版をリリース。そこでユーザーの満足度調査を実施したところ95%が「good」評価でした。この結果を受けてAndroid、Windows版での開発もスタート。2026年3月23日に『ビジネス英語コース』で正式リリースしています。また、3月30日には『中高生英会話コース』にもAI英会話機能が追加。5月には『新日常英会話コース』の接客英会話においてもAI英会話が追加され、一気に複数コースでの機能実装を実現しています。
Q:複数のコースで畳みかけるようにリリースできた秘訣は何ですか。
七里: 私がPPM、PdM、コンテンツの3役を一時的に兼務したように、プロジェクトメンバーがひとつのロールに閉じず幅広い視野を持って関係各所と連携しながら進められたのが大きかったですね。営業組織とも密に連携をとり、コースごとにお客様に広報するタイミングや機能をリリースするタイミングのベストとリリース可能な時期を綿密に調整。だからこそ法人様向けと学校様向けは年度が切り替わるタイミングに間に合わせるべきだという判断に。一度の開発で複数コースに展開可能な仕様で設計したからこそ、このスケジュールは実現できたのだと捉えています。
Q:まだリリース直後ですが、AI英会話機能による良い兆しは感じますか。
七里: ユーザーの学習動向データを見ていると、以前より「アウトプット学習」の量が増えています。アウトプット学習とはつまり、話すこと。日本の英語学習者は単語や文法を覚えるインプット学習に偏りがちで、『スタディサプリENGLISH』でもアウトプット学習の体験価値を上げることが課題でした。それがAI英会話の実装によって、インプットからアウトプットまでの学習体験がバランス良く実施される状態に近づいてきている。私が昔から目指していた理想の英語学習の姿に一歩近づけたことが嬉しいです。
Q:最後に、『スタディサプリ』に携わる七里さんが今後チャレンジしたいことを教えてください。
七里: 近年のAIの進化は目覚ましく、AIによる自動翻訳や通訳の精度も飛躍的に向上しています。もしかしたら、少なくとも情報伝達をするだけなら語学スキルは不要な未来が来るかもしれません。けれど、言葉の裏にある意味や感情の機微などを真に理解しあうには、生身の人間同士の会話がこれからも必要でしょう。また、言語を学ぶことは単なる語学の習得だけでなく、異なる文化や価値観を知ることであり、世界を学ぶこと。スキルアップだけではない価値を『スタディサプリENGLISH』を通して届けることが、私の目標です。
記事中で紹介した事業(名称や内容含む)や人物及び肩書については取材当時のものであり、現時点で異なる可能性がございます。





